カナの婚礼(新約聖書「ヨハネの福音書」第2章より)
私はマリア様の下男のハッサンと申します。
マリア様がカナのご親戚の婚姻の取り仕切りを任されたときにもお供しました。
大わらわで料理や葡萄酒などを用意しました。
ところが、予定外にお客様が増え、また皆さんよく飲み食いされました。
宴会の世話役が青ざめてしまいました。
「ハッサンよ。たいへんだ。葡萄酒が切れた。いまテーブルにお出ししているだけで全部だ。もう皆さん酔いも回っている。安物でいいから何とか調達してきてくれ。すぐマリア奥様と相談してくれ!」
私もあわててマリア様にご相談しました。
マリア様は息子のイエス様を呼ぶようにおっしゃいました。マリア様のご家族であり、お弟子様ともども婚礼に出席されていたのです。
マリア様はイエス様と何事か相談されてからおっしゃいました。
「ハッサン。何でもこの方のいうとおりにしてあげてください。」
ご自分の息子さんのことを「この方」というのも不思議だと思いましたが、ともかく時間がありません。
イエス様は「水がめに水を一杯満たしなさい。」とおっしゃいました。
下働きの男たちみんなで、100リットルも入るかという大きな水がめ6つに水を一杯満たしました。すると、ぶつぶつと泡が立つような音がしてきました。おいしそうな匂いも漂ってくるではありませんか。
イエス様は「そこから汲んで世話役のところに持っていきなさい。」とおっしゃいます。
私たちは葡萄酒を入れる壺に水がめから汲みいれて宴会の場へ運びました。芳醇な香りがますます強くなっていきます。
「ハッサン、葡萄酒はあったのか。」世話役が青ざめながら叫んでいました。
私は壺を渡しました。世話役は壺から一口すくって飲み、はっと顔を見上げました。
「ハッサン、これはすごい!こんな上等な葡萄酒をどこから持ってきたんだ。」
私は素知らぬ顔で「この家にあったんだよ。」と答えました。
世話役は「花婿さんを呼んで来い!」と叫びます。
呼ばれた花婿さんは、何か落ち度があったのかと、ひやひやしながらやってきました。
世話役が言います。「あんたを見直したよ。この葡萄酒を一口飲んでごらん。」
花婿さんは言われるままに一口飲みました。そして、「あ、これは!」
世話役はさらに続けます「若いのに感心したよ。大体みんな初めのうちはそれなりの葡萄酒を出すが、お客の酔いが回ったら、もう味もわからないだろう、といって安物を出すものだ。あんたは、一番の上物を最後までとっておいたのだ。」
それから「ハッサン、この葡萄酒はどれくらいあるんだ。」
私は答えました。「大がめ6つ。あふれるほどに入っているよ。」
これがイエス様の最初の奇跡でした。あふれるほどの恵みの初めだったのです。
(注)2011年9月東京カベナント教会ブログ「重荷をおろして」に投稿していた記事です。昨年10月刊行の「聖書(新改訳2017年版)」を読み進んでおり、もうすぐ通読を完了します。以前に投稿していた聖書にかかる記事もこの機会に次々ご紹介して参ります。
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