toranekodoranekoのブログ

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マイナンバーカード問題は人為的ミスでなくシステムそのものの失敗。これからも問題が噴出する。


マイナンバーカードでトラブルが相次いでいるのにかかわらず、あたかもシステム外の「人為ミス」が主な原因という論説が、目につきます。大きな間違いです。人為的ミスではなく、システムの基本的な設計運用のミスと考えるべきです。
いわんや、コンビニでの証明書誤交付にいたっては、システム設計における初歩的なミスです。このようなベンダーに開発を任せたこと自体が間違いです。


ここでは、「人為的ミス」とされるものについて、問題点を確認しておきます。


システムの設計運用では、基本的な3つの機能を備える必要があります。マイナンバーカードシステムはこれらの機能を備えていなかったのです。初歩的なシステムミスだったのです。
①間違いを防ぐ。
②間違いを早期発見する。
③発見した間違いに的確に対処する。


1.地方自治体のパソコンで住民が入力手続きを終えた後にログアウトを怠った。次の人がそのまま入力したために、前の人のデータに次の人のデータが入り込んだ。
 多数の住民が入れ替わり立ち替わり入力手続きをします。皆さん初めての体験なのです。ログアウトを怠る人がいることは十分にありえます。システム設計の段階で当然予想しておかなければなりません。また、自治体職員がどのように関与するか、というルールも明確にしておくべきだったのです。
例えば、次の程度の工夫はしておくべきです。
①入力画面において、現在入力している人の住所氏名を画面上段に大きく示し、他人の画面に入力しないようにしておく。
②入力終了時に「全ての入力が終わりました。ログアウトしますか?」という画面を表示し、「はい、終了します。」というボタンを押すことを求める。そのボタンを一定時間押さなかったときには、アラームが鳴るようにしておく。
③さらには自治体職員が「入力が終わったら声をかけてください。」とあらかじめ言っておき、「入力が終わりました」と住民が告げたら、ログアウトを促す画面を一緒に確認してログアウトする、といったことです。


2.健康保険組合などが情報の入力を間違えた。
これも健康保険組合の職員にとっては、はじめての仕事です。情報入力を間違うことは当然ありえます。
本来は、手作業ではなくシステム的な入力を行うべきです。
どうしても手作業で行う場合には、入力ミスがあることを想定して、システムを組んでおくべきです。
例えば次のようなことです。
①2人が別々に入力し、システムで入力結果が完全に一致することを確認して、初めて情報を更新する。これは、キーパンチャーが入力をするときに必ず行われていることです。
②入力完了時に処理結果を画面に表示し、入力者が、内容を確認し承認して、はじめて情報が更新されるようにする。
③健康保険の「記号」が入力されていないケースが医療期間の現場で発見されたこともあったと聞きます。
当たり前のことですが、必須情報が入力されていなかったら、入力時にエラーにしなければなりません。その程度のこともできていなかったのでしょうか。
それとも、折角入力したのに、システムの不具合で情報が消えてしまったのでしょうか。それならば、まさしくシステムのエラーです。


さらにもうひと事
④マイナ保険証のデータミスは人命にかかわる問題です。常識的には、マイナ保険証の運用を一旦停止して、原因究明・データ修正・今後の対策を確立したうえで、マイナ保険証の運用を再開する、という程度のことをしておくべきです。当たり前のことですが、現在の健康保険証は当面の間存続させなければなりません。



私は、金融機関で長年事務に携わり、ユーザーの立場でシステムの設計や運用にも関わってきました。その程度のキャリアの人間でも、報道される情報だけでシステムの問題がはっきりとわかります。


官庁にはシステムの専門家はいないのでしょうか。大臣等が「システム外の人為的ミス」といっていることこそ、我国におけるデジタルリテラシーの乏しさの表れです。


またそもそもマスメディアはこの問題について、システムの専門家の見解を確認しなかったのでしょうか。
「大規模なシステムについて初期トラブルは当然起こる」といった議論をする人もいます。
現在発生しているのは、よく起こりうる初期トラブルではなく、基本的なシステム設計・運用のミスに他なりません。容易に防げたはずの問題なのです。



【もう一言:日経社説の大きな問題】
なお、日経新聞5月25日の社説で「マイナンバーカードの活用を止めるな」というのが掲載されていました。こんな議論をされています。


「国は情報漏れが起きても、いたずらに不安が広がらないよう、制度の安全と信頼の確保に努めねばならない。マイナンバーカードの申請が人口の77%に達した背景には行政効率化への期待があり、効果を目に見える形で示して国民の納得を得ることも重要だ。
日本社会は行政に無謬(むびゅう)性を求め、問題が起こるとゼロリスクを唱えて立ち止まりがちで、デジタル化を遅らせる一因になってきた。試行錯誤を許容し、よりよい社会をめざす意識がデジタル社会の基盤を強くする。」(強調部分玉上)


「問題が起こるとゼロリスクを唱えて立ち止まりがち」等というのは、2つの間違いを犯しています。
第一に今回のマイナンバーカードの問題は、とりわけ健康保険証に関しては、人命に関わる重大事態ということを、無視しているのです。
第二に、現在発生している問題は、「ゼロリスクを唱えて立ち止まりがち」というレベルのものではなく、システムの設計運用のあまりにも初歩的なミスであり、容易に防げたはずの問題だ、ということに気が付いていないのです。まさしく、この論者のデジタルリテラシーの乏しさがよく表れています。


なお、マイナンバーカードは、これからますます問題が噴出してくるでしょう。その点は、別途まとめたいと思います。


【銅鑼猫のマイナンバーカード記事は以下のタグでまとめています】


銅鑼猫(社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー:玉上信明)

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