toranekodoranekoのブログ

虎猫・銅鑼猫など様々なブロガーが参加しているサイトです。クリスチャン、社会保険労務士、多言語活動家、女性キャリア官僚、科学ライター、うるさいばあさんまで、多士済々。お楽しみください。

クリスチャンブロガーが綴るブログです。
明るい高齢化社会、病から得た様々な宝、世の中の動きへの警鐘(銅鑼)を鳴らすこともあります。
ときどき大阪弁も出てくる聖書物語もお楽しみに。
主催者のほか様々な協力者も登場します。

製品データ偽装はなぜ起きたのか。

 神戸製鋼、三菱マテリアル、東レなどの製品データ偽装の問題とは何か。
ごく単純化していえば、「納期を守る」という目標のために、現場で規格外の品と知りつつ、規格に合っているとごまかして、そのまま出荷した、ということです。
現場でこんな判断をしてはなりません。そのためには社内で周知すべきことがあります。
経営者が率先して繰り返し周知し、自ら行動しなければなりません。


1.安全はすべてに優先する。
 現場では「もともと過剰品質だから少しぐらい規格に合っていなくても問題はない。」
そのように判断したのでしょう。
「過剰品質」という言葉が安易に使われています。
 製品の安全性を保つためには、設計段階で抗堪性(ダメージに耐えて機能を維持する能力)を十分に確保しておく必要があります。
 そのために、メーカーでは素材をはじめ製造の各過程で、十分な安全余裕を持って設計を行います。いわゆる「多重防御」の考え方です。
 それにより、1ヶ所で設計より若干品質が落ちても、通常は事故には結びつきません。しかし、このようなほころびが随所に見られると大事故につながります。
以下、樋口晴彦「悪魔は細部に宿る-危機管理の落とし穴」から紹介します(同書23~31頁等より)。
①1999年JCO東海事業所の臨界事故のケース
 十分すぎるほどの安全余裕を持っていたが、関係者がこれに甘え「作業工程を少しいじっても大丈夫。」という心理が生じ、工程の違法な変更を繰り返すうちに事故に至った。
②2011年福島第一原発
 所内の非常用発電施設のほかに、外部電源も6回線用意されていた。ところが、地震のために電線の陶器製碍子の破損や鉄塔の倒壊などが生じて外部電源が全く使えなくなった。実は、このような事故は十分予想されていたが、電力会社側は「たとえ外部電源がつぶれても原発内の非常用発電施設があるから大丈夫」という心理に陥っていた。(銅鑼猫注:内部電源のことはよく報じられていましたが、外部にもちゃんと電源があったのですね。ここまで備えていて、いざというときに役に立たなかったのです。「過剰品質」等とたかをくくっていたのでしょうか。)


2.真実を語らなければならない。真実をねじ曲げるもの、嘘を語るものは経営判断を誤らせるものである。
 品質管理責任者などの現場責任者が「これくらいなら大丈夫」と勝手に判断して、上層部に相談もせず、何よりも顧客への相談・連絡もなしに、規格内の製品だと偽って出荷したのです。
 十分な安全余裕があるとしても、それは抗堪性を確保するために顧客の側で設けた基準なのです。出荷する側の、それも現場責任者限りで「これぐらいなら大丈夫。」と勝手に判断し、お客にも真実を伝えなかったことが問題なのです。
 何らかの事情で設計品質を確保できない懸念が出てきたら、速やかに上層部に相談し、顧客に相談して善後策を協議しなければなりません。正確な情報を経営者にも顧客に伝えて、その判断を仰ぐのです。
 顧客の側では、自らの安全余裕の考え方や当該供給製品の使用目的*などを踏まえて判断するでしょう。(*多少規格はずれがあっても大丈夫なのか。人の命に関わる問題なので少しの品質の誤差も許されないのか。あるいは、品質が若干劣っても後工程で問題なくカバーできるのか。)
 製造する物には、通常は一定程度の品質のばらつきは有り得るでしょう。思うに、供給側では顧客の要求する規格よりもさらに高度な規格を設け、品質のばらつきがあっても、なお顧客の要求する規格を確保できるようするのが、メーカーの通常の考え方だと思います。



3.できない約束をしてはならない。できない約束は相手をごまかし、自らを破滅させる。
 「納期に迫られて規格外の品質のものを出荷せざるを得なかった。」というのは何の言い訳にもなりません。
 納期が守れないならば、なぜ、事前に顧客と「この納期では無理だ。」として交渉しなかったのか。あるいは、納期が守れそうもないと分かったときに速やかに顧客と相談しなかったのか。
これは、現場責任者の権限では対応できないでしょう。経営者が事実を把握した上で顧客との交渉などをしかるべき責任者に指示し、場合により自ら顧客に頭を下げて交渉しなければならないのです。
 経営者は、「現場が勝手に判断した。」という言い訳に陥りがちです。現場が勝手に判断するのは「経営者に相談しても無駄だ。」と思っているからでしょう。現場の声を聞こうともせず、無理な目標だということも把握できずに、現場で適当な「創意工夫」や「ごまかし」が行われているのを見過ごしていたのです。
経営者には内部統制システムを構築する責任があります。内部統制システムとは、わかりやすく言えば「知らなかったという言い訳は許さない。現場の状況を把握するのは経営者の責務である。」という意味なのです。


 顧客の目線で見て、平気で嘘をついて製品を出荷してくるような会社は信用できるでしょうか。その現場の状況を経営者が把握せず対策も取っていなかったような会社なら、とても取引はできないでしょう。
 取引を切られる、損害賠償を求められる、株主からも株主代表訴訟を提起される、様々なリスクを背負って、会社も経営者自らも破滅への道を歩みかねないのです。


銅鑼猫(29日15時に少し手を入れました。)

×

非ログインユーザーとして返信する