JR西日本の常軌を逸した連絡体制
JR西日本新幹線台車亀裂事故については、すこしずつ状況が分かってきました。
電車に乗り込んだ保守担当者と指令所担当者のやりとりは、常軌を逸したお粗末さです。
いくつかコメントします。
①電話でのやりとりだけでよかったのか。
電話では言い間違い聞き間違いが必ず起こります。電話しか通信手段がないなら、それだけでもお粗末です。
また電話だけでやりとりをするならば、互いに復唱しあって内容を確認しあうのはビジネスの基本でしょう。人の命に関わる重大時であればなおさらのことです。
さらに言えば、間違いが起こらないように緊急時の電話について内容確認用チェックリストといった類の標準的なプロトコルは、定められていなかったのでしょうか。
共通のチェックリストを保守担当者・指令所担当者がお互いに持って、チェックリスト項目に従って内容を確認し合う、その程度の手順がなかったのでしょうか。
②上司の割り込み
緊急の電話中に上司が割り込んでくるのも、常軌を逸しています。
重要な電話であればスピーカーなどを通じて複数人が聞いて内容を確認し合う、それくらいの仕組みもなかったのでしょうか。
その仕組みがないならば、少なくとも、電話が終わるまでは上司は待つ必要があります。
この事件でも上司の割り込みにより聞き漏らしが生じているのです。
③通話内容のお粗末さ。
お互いに分かったような分からなかったような会話で誤認が生じています。
指令所の担当者は、「運行に支障がないか。」といった保守担当者への意見を求めています。このこと自体が問題かもしれません。
保守担当者は、「支障はないと思われるが、床下点検をした方が良いと思う。」と答えています。指令所の担当者がまず確認すべきは、現場の保守担当者としてどんな行動が必要と思うか、という意見・提言です。「床下点検の要否」こそが会話の肝だったはずです。
「運行に支障があるかどうか」は保守担当者がその場で判断できるはずがないのです。指令所の担当者は、「現場の担当者が『運行に支障がない』と言っている。」という回答を導くために誘導尋問をしていたとさえいえるように思われます。
④対策についての提言
JR 各社ともこのようなお粗末な連絡体制をとっているのでしょうか。
まず、JR 各社の保守担当者や指令室担当者などから、自分がこの場にあればどのような会話をするべきと思うか、聴いてみるべきです。
それだけでも各種のヒントが得られるでしょう。会話の取り運び方、チェックリストなどの標準装備等すぐいくつものヒントが出てくるでしょう。 意識の問題、仕組みの問題として、外部第三者委員会などを巻き込んで延々と議論するよりも、まず現場の知恵を出し合うことです。
そしてせめて、運行指令所で緊急電話の内容を共有できるように電話のスピーカー設備程度はすぐ用意すべきです。
⑤我国の誇りとすべきは、恥を忍んですべてを公表したこと。
一つだけ褒めるべきことは、このお粗末な会話を堂々と公表したことです。
事故が起こった時に事故車を地中に埋めて証拠を隠滅するようなどこかの国とはまるで違います。
問題は問題として素直に事実を公表し、改善に向けて努力する。それこそ我国の誇りだと思います。
銅鑼猫