ビジネスの基本:批判を受け入れること、記録を残すこと(再掲)。
2017年7月に投稿していたブログですが、いま見直して、コロナ騒ぎに対する適切な指摘になる、と考えました。再投稿します。
私が現役の銀行員であった時に心がけていたことが二つあります。
私はコンプライアンス研修を担当していました。全社員向けのe-learning 研修の教材などを作成していました。
研修には、必ず受講者アンケートを添えました。
様々な意見が出てきました。
教材の整理の仕方が悪い。説明の仕方がわかりにくい、といったところから、字が大きすぎる、小さすぎる。色使いのセンスが悪い。挙句の果てには「こんな教材を作った奴の顔が見たい。」
一生懸命作った教材ですから、厳しい批判を受けると結構つらいものでした。
ある時心に決めました。批判はすべて受け入れよう。
銀行のコンプライアンス研修です。全社員必修、テーマによっては役員も含めて必修です。
言ってみれば究極の独占業務です。
権限を盾に批判を無視してはならない。有難く受け入れ次の研修に生かしていけばよい。そのように考えたとき、厳しい批判こそが自分が見えなかった問題を示すものであり、これに真摯に向き合うことが自らの力を養い、さらに、良いものを作っていくことができると気が付いたのです。
もう一つ。若い頃に事務の責任者をしていましたが、様々なミスやトラブルがあり、都度に対処していきました。
その時に心掛けたのはともかく記録を残すことです。
自分の得た情報、意思決定のプロセスをともかくその場で速やかに記録しておくこと。
事態・原因・対処・今後の対応、といった項目に整理しA4の書式一枚にまとめました。
自分が判断して対処した。しかし、後の人から見れば間違いや問題があるかもしれない。大切なことは、その時の現場の責任者としての判断について記録を残すことで、後に続く人がさらに冷静な判断をし、問題があれば改めることができるようにすること、同様の問題が起こればより適切な判断ができるように材料を残すこと。それを積み重ねていけば、きっと会社全体の大きな改革にも繋がっていくだろう。
そう考えたのです。
後になって会社の中では稟議書・決裁書には必ず「意思決定の記録」を添付する、というルールが設けられました。どのような情報を集め、どのような会議でどんな議論をして意思決定をしたのか。それを必ず一覧化して資料も取り纏めて記録することとなったのです。そのやり方を企画した人の名前を取って「織田リスト(仮名です)」と呼ばれるようになりました。
稟議書・決算書を作る側からすれば、結構わずらわしいものです。でも、このような意思決定記録を残すルールがあったため、意思決定のプロセスの適否を決裁者が容易に把握でき、また、後日、他の人が決定の適否を容易に判断できるようになりました。
考えてみればビジネスの基本です。
誰でも間違うことはある。それは仕方がない。だが、その間違いを後日でも判断して正すこと、今後の参考にしていくことはできるはずです。
国家の中枢の意思決定の場にあって「批判を受けいれる」「記録を残す」こんな初歩的・基本的なところがまともにできていないことが次々と判明しています。
一つの民間企業の中で一人一人の担当者がビジネスの基本として実施してきていることを、なぜ、我国の政府では、できないのでしょうか。
批判を封殺することは判断の誤りを生みます。意思決定の記録さえ残していないなら、決定の適否を検証することもできません。そして、誤った意思決定は、国を滅ぼします。
その怖さを知り、覚悟を持って国政に当たること。
今一度、胸に手を当てて考え直していただきたいと思います。
訓戒を無視する者は自分のいのちをないがしろにする。
叱責を聞き入れる者は思慮を得る。
旧約聖書 箴言第15章第32節
銅鑼猫