マーラー交響曲第三番特別演奏会 ささやかな感想
第1楽章
冒頭のホルンの吹鳴は、山の威容をまえに畏れを持って立つ人間の姿です。
ホルン奏者は、自分の楽器を吹き鳴らすのではなく、自然を体現するのです。
粛然とした思いで、自らの吹鳴をこの自然を造られた神に捧げるのです。
そして、この第1楽章の中で、大太鼓のなんと雄弁なこと。実演だからこそはっきりとわかりました。
トランペット、トロンボーンのソロの躍動感、表情の豊かさ等も印象深いものでした。
この後の20分の休憩は適切ですね。
第1楽章は、あまりにも広大すぎるのです。
第2楽章から第5楽章までは、それぞれに個性的な素適な楽章です。
マーラーが、まず第2楽章から作曲を始めたというのも、うなずけるものです。
第3楽章ポストホルンがやや乱れたのは大変残念です。思うに、舞台袖でひっそりと吹くほうがこの曲にふさわしかったのではないでしょうか?
第4、第5楽章でメゾソプラノ、合唱が加わる可憐で奥深い場面は、私の大好きなところです。
そして最後の第6楽章
これも本当に雄大な響き、静かなたたずまいから曲が進むにつれて、巨大な音塊がそびえ立つのです。
まさか5組のシンバルが同時に打ち鳴らされるとは!
なお、一言申し上げるならば、第1楽章冒頭の9本のホルンが乱れたのは、大変残念です。
この曲を初めて生で聴く、その一番の楽しみだったのです。
山の威容をまえに畏れを持って立つ人間の姿。
ホルン奏者は、自分の楽器を吹き鳴らすのではなく、自然を体現するのです。
粛然とした思いで、自らの吹鳴をこの自然を造られた神に捧げる。
果たして9人の奏者がその思いで、虞(おそれ)をもって奏されていたのでしょうか?
アンコールで思いもかけず再び演奏されたあの冒頭部分は見事に一体化して素晴らしいものでした。
佐伯先生のお誕生日を祝う皆さんの演奏に涙が出そうになりました。
皆様がたのご健勝、一層のご活躍をお祈り申し上げます。
杉並区 玉上信明(元チューバ奏者)
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