toranekodoranekoのブログ

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LRセミナー18/9/12(水)「不正・不祥事防止の2つの視点~監査と職場管理~」お礼

  先にご案内の一般社団法人リーガル・リスクマネジメント研究機構(LR)下記セミナーは無事終了いたしました。セミナーの案内のすぐ後に満員御礼、60名近くの方のご出席(うち一般企業関係者3分の2、弁護士・会計士等専門職3分の1)という盛況に、不正・不祥事防止に対する皆様の関心の強さを改めて感じました。


LRセミナー18/9/12(水)「不正・不祥事防止の2つの視点~監査と職場管理~」


  セミナーの模様を簡単に振り返ってご報告申し上げます。
公認会計士の辻さちえ先生と玉上とのコラボで、18時半から20時半までの2時間での実施です。玉上の部分を中心に概要お話申し上げます。
 受講された方にとっては、前半の辻先生の監査にかかる理論的な枠組みを把握された上で、玉上からの実務に寄り添った話を聴いていただくことで、理論・実務双方から不正・不祥事への対応を多面的に理解いただけたのではないかと思います。
 ぜひ、さらに多くの方に向けセミナーを実施する機会に恵まれますよう願っています。この内容のエッセンスを電子書籍で出版することも検討しています。


 また、私は「紙芝居型講師」(登録商標)という企画に関与しております。そこで鍛え上げられた話の仕方が、有効に機能したと思います。少し声を潜める、間をあける、などのちょっとした工夫で、その場の受講者の方の注意を引き、いわばその場の雰囲気そのものをコントロールしていくような不思議な感覚を味わいました。


1.セミナー前半;「不正不祥事予防と監査」
講師 辻さちえ先生(株式会社エスプラス代表取締役、公認会計士、公認不正検査士、日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN) 理事)



①不正・不祥事における監査の役割
 監査とはいわば、企業のための「人間ドック」。
悪いところがあれば早く的確に見つけ、大丈夫ならば、その旨笑顔で言ってくれる。
そして、「こうすればもっと良くなりますよ。」とその人に寄り添ったアドバイスをくれるのが、良い監査だ。
②不正・不祥事予防・早期発見の監査の実践
 監査を実施する側は、何が健康な状態なのかを把握していなければならない。
不正リスクを意識した内部統制が機能しているかどうかを検証する。
問題なのは、不正を引き起こす「風土・文化」。この監査手法については、様々な検討がされている段階である。
不正会計発展のための財務分析についての基本的な考え方の紹介。


2.セミナー後半:「職場管理と不正・不祥事防止」
―不正・不祥事は他人事ではない。現場管理者・本部担当者のために明日からすぐ役立つ実践ガイドー


講師 玉上信明(社会保険労務士 健康経営アドバイザー 日本公認不正検査士協会アソシエイト会員)


冒頭「紙芝居:過労死過労自殺こそ最大の不祥事―企業を潰し経営者の身の破滅となるー。」
5分間の紙芝居:内容はYouTube に投稿した以下のものと同じです。

過労死こそ最大の不祥事


第1章:不正・不祥事発生の仕組みと対処のポイント
 コンプライアンスとは社会の要請・信頼に応えること。その間逆が不祥事。社会の要請・信頼を裏切ること。これまでの不祥事は、専ら意図的な不正により引き起こされてきたが、最近は、過失・うっかり、無知が不祥事に繋がる事例も増えており、コントロールが難しくなっている。
 不正・不祥事を引き起こすのは、実際にはごく普通の人。いわゆる「不正のトライアングル」がそのメカニズムをわかりやすく説明している。
 不正不祥事への対応は、ある意味では簡単である。
行為者はごく普通の人。発生時の対応は普通の人への冷静な対応、に尽きる。
再発防止策の要諦は、普通の人が安心して誇りを持って働ける、そのような職場を作ることである。
 不都合な真実:「不正を犯す人には共通の特徴があり、事前にある程度見極められるのではないか。」といった常識がある。これは間違い。ごく普通の人が不正のトライアングルに絡め取られ不正を犯す。「明日は我が身」と思うべきだ。
 また、行為者そのものよりも経営者・管理者の問題こそが不正・不祥事を引き起こす。不正・不祥事が発生する会社の共通の特色は、ヤミ残業、ハラスメントが横行し、何よりも経営者や管理者が社員を見下し馬鹿にしていることだ。働く人の誇りを踏みにじることだ。それがあるからこそ、ある行為者の不正・不祥事として顕在化するのだ。


第2章 不正・不祥事発生時の対応
 はじめにお尋ねする。皆さんの会社組織に不正・不祥事発生時の手順書はありますか?発生時に向けたリハーサル・実地訓練をされていますか?
⇒受講者から全く手があがらず。
⇒玉上コメント:火災や地震ならば定期的な防災訓練をしているはず。不正・不祥事は会社を潰すものである。対応の手順書を設け、リハーサルをするのは当たり前の事だと思いませんか?
 発生時の対応には様々な技術的な問題がある。かいつまんで説明する。レジメ資料は、手厚く作っている。この場ではお味見程度しか説明できないが、ぜひ、折り詰めにしてお持ち帰りご賞味ください。
(例)
資料の収集と共有、プライベートな場所の捜索の限界、
面接調査(各技法は、管理監督者が部下に接するさいの貴重な教訓となる)
類似・関連事案の調査には限界あり、「一度では調べ尽くせない。」と考えること。
経営者への一言:不正・不祥事対応は、経営者が自らの責任で全力を尽くして行う。前任社長が引き起こした問題であっても、小さな子会社は引き起こした問題であっても、権限と責任を持って解決できるのは、現在の社長だけである。


第3章 再発防止のためのヒント
 「組織風土・意識」といった言葉に幻惑されるな。これらは組織内の行動の特徴に張られたレッテルに過ぎない。具体的な行動を変えることで、風土を変えていくこともできる。
参考:警察大学校・樋口晴彦教授 「再発防止策」はなぜ機能しないのか」


 事務管理の三原則:目的適合性、自動進行性といった原則に基づいて、事務・業務は組み立てられなければならない。間違ってはならないのは「経済性の原則」。目的適合性・自動進行性の原則を満たす範囲で一番経済的な方法を選択する、ということにほかならない。コスト削減圧力のもと、目的適合性や自動進行性といったその事務・業務の必須の機能を損なうことが、しばしば見られるのではないか。


 抑止策の要諦は、事の重大さの周知。近時のメーカーなどの品質偽装は「品質基準を遵守していなければ、いざというときに大事故になる。」という問題意識が欠けているためだ。
(例)福島第一原発では、構内の非常用電源のほかに、発電所外にも手厚い非常用電源を用意していた。ところが、送電線の碍子などに問題があった。地震が来ればたちまち吹っ飛んでしまう。そのことに多くの人は気が付いていたが「外部電源が失われても発電所構内に手厚い非常用電源があるから大丈夫だ。」と勝手に思い込んでいた。果たして、地震発生時に外部送電線が真っ先にやられて使えなくなった。
参考:樋口晴彦「悪魔は細部に宿る-危機管理の落とし穴」
玉上ブログ「製品データ偽装はなぜ起きたのか。」


 内部通報制度:
受講者の皆様への質問。「内部通報をした方しようと思った方はいらっしゃいますか?」⇒全員声なし。苦笑いのみ。
 玉上より説明「内部通報制度」とは、「気がついているのがたった1人の人だったとしても経営陣に通報できる。」という、いわば「最後の命綱」に他ならない。通報には大変な勇気がいる。都合よく通報が来ると期待すべきではない。通常のレポーティングラインの整備にこそ力をそそがなければならない。


 現場の声を取り上げるには、コンプライアンスアンケート、お客様・取引先の声の重視などを検討するべき。さらに、緊急時連絡は、ラインを通じた通常の連絡と異なり、担当者が中間管理職をすっとばして、本部に連絡をすることを奨励しなければならない。
(失敗事例)島津 翔「東洋ゴム免震偽装(日経ビジネス記事)」
 前任者の不正を後任者が気が付いたのに、内部各段階で調査しているうちに時間が経過。国土交通省への報告まで2年を要した。


 会社を根本から腐らせる「落とし穴」:目的至上主義(東芝、スルガ銀行等)、成果主義人事の問題、「ノーミス運動」の落とし穴(ミスは発生するのが当たり前。むしろ「ミスを恥じるな、失敗を隠すな」というキャンペーンこそが有効)。
さらに、日経新聞投稿を参照いただきたい。ヤミ残業は経営の基礎数値をごまかすもの。不正の温床となる。(参考)ヤミ残業は不正の温床となる(日経新聞2017年1月30日私見卓見欄投稿)


【リーガル・リスクマネジメント研究機構のセミナーレポート:230728追記】




                                  以上


銅鑼猫

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