toranekodoranekoのブログ

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「権限なきリーダーシップ」

この記録は、NPO法人多言語(たげんご)広場(ピアザ)CELULAS(セルラス)鈴木理事長の昨年12月4日セルラスフェスティバルにおける講演の内容を、ニックとして特に印象深かった箇所を中心に纏めたものです。録音録画から逐語的に書き起こしたものではありません。読み言葉としてのわかりやすさを考えて小見出しや配列なども工夫しています。


理事長の講演の内容は多岐にわたり、この取り纏めで尽くせるものではありません。少しでも皆様のご参考になるようにニックなりに纏めてみたものです。
講演の内容の一端を知っていただき、セルラスの活動への理解を深めていただく一助となれば幸いです。



1.日時:平成28年12月4日(日)13時半から16時半の中での講演
2.場所:渋谷区地域交流センター恵比寿


【内容】(記録者にて適宜小見出しをつけ、特記事項を記録)


はじめに
今日は10分以内で話せということなので脱線せずにお話する。米国の大学や高校で発達してきている。権限のないリーダーシップについて話したい。
この会をやってくれているジュニアリーダー、中高生たちの自己表現自覚は大分進んできた。中心メンバーだったお兄さんお姉さんたちが受験や留学などでいない時には、今司会している 中学2年生の子供がこんなにしっかりしている。セルラスが世界に通ずる人材育成を行ってきた成果だと思う。多言語を外して人材育成だけするのではない。多言語を基盤にして人材を育成する。


Ⅰ.権限のないリーダーシップとは
2020年問題。大学の入試に思考力・判断力・想像力を盛り込む。高校も予備校も、おおわらわで準備している。しかしこれは、セルラスが初めからやってきたことだ。
アメリカでは1995年からグローバルリーダーシッププログラムとして、権限なきリーダーシップを打ち出している。
4週間ほど前の読売新聞だったと思うが、立教大学中心にリーダーシップ研究のためアメリカに視察に行った記事がある。
「今までは、カリスマ的あるいは権限を付与されたのもの、元々自分の中にそのような要素がある人がリーダーとなる。その人たちについて、どのようにリーダーシップを育てるか。」という目線で考えていた。
だが、リーダーシップの考え方がガラッと変わっていることがわかった。
グローバルな社会の中では、今までなかった問題が次々とおこる。権限があるリーダーシップでは対抗できない。もって生まれた資質や与えられた権限ではなく、自分がその場にいて、必要なことを見つけて、いち早く行動する。その様なリーダーシップが求められる。アメリカがそれを浸透させようとしている。



Ⅱ.セルラスの活動と権限のないリーダーシップ
セルラスのリーダーズトレーニングキャンプ(原則中学生以上の青少年を中心に2泊3日のキャンプ活動)は5、6年前から始めているが、リーダーシップについて次のように定義している。
1.あらゆる状況の中で
2.今自分は何をすべきか。
3.それを見極めて能動的に行動する。


一例を挙げる。
満員電車の中で、2歳ぐらいの幼児を連れたお母さんに席を譲った。お母さんは私の年を考えてすまなさそうに席に座った。その子が急に気分が悪くなり嘔吐した。とっさにティッシュを出して汚れたところをふいた。自分のティッシュがなくなったので、「ティッシュを貸していただけませんか」と周囲に声をかけた。大勢の人が一斉にティッシュを出してふいたくれた。汚れた床を掃除する人も出てきた。お母さんはひたすら「すみません。有難う。」といっていた。そのような姿を見ながらこの国はまだ大丈夫だと思った。
状況の中で自分が何をすべきか。まず自ら動く、それが周りの人を動かす。


リーダーズトレーニングキャンプの中で、強調しているのは「参加している人間」ではなく、「主催している人間」の立場に立てるかということである。
何をするか目標しっかり持つこと。プログラムの参加に当たっては、自分は何をするのかを見極めて行動すること。などを繰り返し強調している。
キャンプから帰ってから、学校で社会で、そのように行動して欲しいと思う。
このような行動は大学や高校から始めたのでは遅い。もっと小さい時から自分が何をするか鍛えていくべきである。既にピアザではやっていることだ。
ピアザの中でやることを整理してみる。多くのピアザでは既にできていると思う。
できていないピアザがあれば、できるように努めて欲しい。
1.皆で目標を共有する。
自分が主体である。「子供のため」といったexcuse の壁を作るのではなく、お母さん自身が自ら主体的に考えて行動する。共感しあいながら共有していける存在が必要である。共感とは口先だけの「あなたの気持ちわかるわ。」ではない。その人に寄り添うことである。
2.自ら進んで範を示す。
まず自分が率先垂範して行動することである。先程の満員電車での子供の嘔吐の例では、「さあ皆さん片付けましょう。」ではなく、まず自分がティッシュを取り出して拭いた。そして周りの人々の共感を得て、周りの人々とともに行動した。
「みんながやっているから」ではなく、まず、自分がやることである。
3.支援の輪を広げる。
先程の満員電車の例は、実は、私自身の体験である。長年セルラス活動をしていくうちに自分の体にこのような行動の仕方が染み込んでいる。その場で自分のできる事は何かを考えて行動し、お互いに励まし合い、寄り添い、助け合う。


Ⅲ.2017年の世界「多文化主義は崩壊するのか。」
2017年欧米では、様々な問題が噴出している。本年の英国のEU 離脱、米国大統領選挙でのトランプの当選、イタリアの大統領選挙、フランスの大統領選挙オーストリアの元首、それぞれに共通しているのは移民を受け入れてきた国々が、「多文化主義は社会をおかしくした。」という評価が蔓延していることである。
ドイツのメルケル首相が2010年に「多文化主義は崩壊した。」と語っている。
(記録者注)このメルケル首相の発言については、次の参考記事も参照ください。
 室橋祐貴「メルケル首相『多文化主義は完全に失敗』-今この発言に注目すべき理由」
(2016年1月25日THE HUFFINGTONPOST


本当にそうなのか。
多文化主義という「構造」と向き合っているからそう思うのではないか。構造同士のぶつかり合いが生じたのだ。
多文化の中にいる「人」と本当に向き合っているのか。
私はこれまで沢山の国の人と会ったが、「何国人」と考えたことはない。そこに生きている人と向き合ってきたつもりである。
このような考え方をもっともっと深く見つめていきたい。
以上


【参考資料】
日向野幹也
管理職研修と「権限のないリーダーシップ」(東京大学「社会科学研究」第64巻第3号)
「抄録」  「全文」

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