「現状を踏まえた産廃処理業の労働環境整備」全産連機関誌投稿ご報告(その2)
2.働き方改革―今取り組むべき課題
今すぐ取り組むべき課題は何かを簡単に確認しておこう。
2.1.働き方改革は既に始まっている。
大企業中小企業を問わず2019年4月施行済みで重要なものは次の2つである。
①年次有給休暇の確実付与義務
年休付与日数10日以上の労働者に使用者が毎年5日分を時季指定での付与が義務化された。管理監督者も対象である。違反者は30万円以下の罰金が科される(労働基準法第39条)。年休管理簿作成・3年間保存も義務付けられている。
有休取得は労働者の権利である。労働者の心身の疲労の回復、生産性の向上など労働者・会社双方にとってメリットがある。これまで労働者が遠慮して有休取得を申し入れず、使用者も有休取得促進に前向きではなかった。国としてこの現状を一気に変えようとしている。
②労働時間の状況の把握義務(管理監督者等も対象)
時間外割増賃金の問題だけでなく、ポイントは健康管理の視点である。労働時間の状況は客観的方法等により把握する。管理監督者・裁量労働制適用者等すべての労働者が対象である(例外は高度プロフェッショナル制度適用者のみ)(労働安全衛生法 66 条の8の3:罰則はないが、過労死等の問題が生じた場合、使用者の安全配慮義務の判断に影響することになろう)。
2.2.2020年以降には次の改革が適用される
①時間外労働の罰則つき上限規制(2020年4月施行予定。大企業は2019年4月施行済)
時間外労働は36協定が締結されれば上限はなく、基本的に労使自治に委ねられていた。だが、過労死が高止まりしている現状から国家として放置できなくなったとされる。過労死ラインを超える時間外労働は、労働基準法違反になる。「月100時間以上、2~6ヶ月平均80時間超は不可」という数字だけが強調されるが、もっと大切なのは「年のうち6ヶ月は45時間以内に止めなければならない」ということである。
注意点を3点あげる
(その1)一部の事業、業種について適用が猶予・除外されるものがある。
(その2)ヤミ残業は絶対に許されない。刑事罰逃れの違法行為と見られることになろう。何よりも時間外の実態を正確に把握しないと経営者が判断を誤ることになりかねない。
(その3)今後、上限規制はさらに厳しくなろう。現在は、過労死ラインという最低限の規制であり、これで留まると考えない方が良い。
【図3】 時間外労働の罰則つき上限規制
②雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(「同一労働・同一賃金」2021年4月施行。大企業は2020年4月施行)
「正社員(無期雇用フルタイム労働者)」と「非正規社員(短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)」の不合理な待遇差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を「選択できる」ようにする、という趣旨である。まだ適用まで時間があると思ってはならない。自社の賃金体系を棚卸しして準備を進めないと間に合わなくなる可能性がある。
(以下次号)
【前書き】(9月28日公開)
1.産廃処理・資源循環業の現状(同上)
1.1.業界全体の社会の中の位置付け
1.2.直面する課題
2.働き方改革―今取り組むべき課題(本稿)
2.1.働き方改革は既に始まっている。
2.2.「2020年以降」には次の改革が適用される
3.業界として取り組むべき参考事例(9月30日公開)
3.1働き方改革に臨む基本姿勢
3.2. 所定外労働時間の削減策
3.3. 年次有給休暇の取得促進
3.4. 中小企業事業主団体による取組
4.所管官庁等の様々なサポート(以下10月1日公開:完結)
4.1. 厚生労働省・中小企業庁から業界団体への要請(中小企業への押し付け防止)
4.2. 厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」
5.まとめ
銅鑼猫