こども性暴力防止法について日経新聞に拙稿が掲載されました。

本日4月17日日経新聞「私見卓見欄」に拙稿が掲載されました。
以下本文を掲載します。
子どもの性被害、誓約書で防げ 玉上信明氏
社会保険労務士
こども性暴力防止法に基づき、性犯罪歴を確認する「日本版DBS」の施行が近づいている。教職員らによる性被害が相次ぐ中、待望の制度だが、実効性については冷静な視点が必要だ。最大の限界は、照会対象が有罪判決等の重い犯歴に限定される点だ。さらに、教育現場における加害者の約9割は初犯といわれており、過去の犯歴を追うだけではリスクのほとんどをカバーできない。
国家が機微な情報を開示する以上、慎重な運用は避けられない。その際、残るリスクをどう制御するか。事業主は国の施策に依存せず、自らの採用の自由と懲戒権をフルに活用すべきではないか。具体的には採用時に「表明確約型誓約書」を導入することだ。
犯歴以前の不適切行為の不存在や将来の順守事項を誓約させ、虚偽があれば解雇を受け入れる旨を明文化する。私はかつて金融機関で反社会的勢力排除(暴排)の実務に携わったが、当時の暴排条項も今や契約の前提として社会に定着している。性犯罪リスク対策にも、この「暴排モデル」を応用してはどうか。
採用後に過去の非違行為が判明すれば、それは契約上の重大な経歴詐称および信義則違反となる。こども家庭庁が示した制度説明資料や事前準備の留意点でも、こうした誓約書の活用や就業規則整備の重要性が強調されている。また、在籍者にも定期的に誓約書を提出させるべきだ。私が以前勤めていた信託銀行では、インサイダー取引防止の誓約書を年2回、全役職員から提出させていた。このような継続的な意識付けこそがガバナンスの要諦である。
この対応は教育・保育業界に限定されるべきではない。玩具店、外食、遊園地など、子どもを顧客とするあらゆる事業者は同様のリスクを抱えている。幼い顧客を守れない事業者は、不祥事一つでブランド価値を失墜させるだろう。
日本版DBSは国家による限定的な支援策に過ぎない。顧客の安全確保は事業者の基本的な責務である。まずは自らの契約と規律によって悪意ある者を入り口で排除し、継続的に監視する仕組みを構築すべきだ。民間の知恵と覚悟で、子どもに最も優しい社会を実装したい。
(注)①本文は玉上の著作物であることを日経新聞に確認済み。なお日経新聞紙面は日経のロゴなどが入っているので日経の著作物であり、お示しできません。
②紙面に掲載する肩書は1つのみとするのが、日経新聞の取り扱いです。「健康経営エキスパートアドバイザー」の肩書は掲載を見送りました。
(日経有料版の読者の方なら次のリンクでもお読みいただけます)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD132I60T10C26A1000000/
【本稿作成についてのコメント】
この問題については、マスメディアが「日本版DBS」の問題を大きく取り上げてきましたが、大変違和感を覚えて、自分なりに考えたものです。
反社対応の暴排条項、表明確約の誓約書を用いることで、もっと広範囲に効果的に、問題のある人から子供たちを守れるのではないか、と考えました。重大な経歴詐称が懲戒事由に該当しうる、ということと組み合わせて、まとめました。
お上に頼らず事業者自らが幼い顧客を守るために尽くさなければならない、それも教育保育に限った問題ではない、という視点も、一般の議論で希薄なように思われ、その点を結論にしたものです。
なお、この記事をまとめるにあたっては、生成AIのグーグルGeminiも活用して、基礎資料を収集するなどいたしました。
銅鑼猫(社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー 玉上信明)