ローズ・アンダーファイア(強制収容所を生き延びた女性)
クリスマスを前に素晴らしい本に出会いました。
「ローズ・アンダーファイヤ」(エリザベス・ウェイン著 吉澤康子訳)
米国の元気な少女が第2次大戦中に英国空軍に加わり、飛行機の輸送に携わりますが、ドイツ軍にとらわれラーフェンスブリュック強制収容所に入れられます。
あまりにも凄惨な内容で、途中で読むのをやめようと思いました。人体実験されたポーランドの少女たち、主人公も拷問を受けたり、様々な悲惨なシーンが現れます。収容所の中の多言語の世界が実感をもって眼前に現れます(看守のドイツ語、収容者たちのフランス語、ポーランド語、ロシア語そして英語)。
それでも、仲間とともにささやかな抵抗を試み、遂に痛快な結末へ読者を導きます。
詳しいあらすじは省きます。
訳者吉澤康子さんの解説から一言だけ引用します。
「本書を訳しながら、命を落としてもおかしくない収容所の悲惨な生活の中にあっても、思いやりを失わずにいる登場人物への深い敬意が、心の底から湧き上がってきたものです。」
細かな活字で文庫本500頁にも及ぶ長編小説です。それでも、内容の素晴らしさ、こなれた名訳で、一度手に取れば、読み進む数日間が貴重な体験となることでしょう。
同じ著者の「コードネーム・ヴェリティ」も同じ第2次大戦中の勇敢な女性たちの物語です。これを夢中になって読み、同じ著者のもう1冊の本に取り組んだのです。時間的には、こちらが前にはなりますが、どちらを先に読んでいただいてもいいと思います。
虎猫