職場におけるがん教育ー両立支援について(産業保健フォーラム特別講演)
10月2日(水)10:30~16:30に ティアラこうとうで開催されました。
その特別講演 「職場におけるがん教育-両立支援をめざして-」の概要を取り急ぎお伝えします。講演内容を銅鑼猫が適宜整理し直したものです。
参考資料なども、ぜひご一読ください。
講師:中川恵一氏
厚生労働省 がん対策推進企業アクション議長
文部科学省 がんの教育に関する検討委員会委員
東京大学医学部附属病院 放射線治療部門長
【主な内容】
がんの治療はちょっとした知識の有無で運命が変わる。
現在中学高校では学校でがん教育を行っている。
社会人はどうなのか。職場でがん教育を徹底して知識の周知を図るべきだ。
1.がんの特徴
①「症状が出にくい。」:自分ではわからない。元気と思っても定期的な検査が必要だ。
②「自分はがんにならない。」と誰でも思い込む:専門医の私ですらそうだった。
③予防しても万全ではない。:生活習慣をいくら整えても、がん関係の遺伝子の偶発的なエラーでがんが起こりうる。
④早期発見・早期治療すれば治る病気になっている。
「ステージ1」早期の段階なら、がん全体の3分の2の治癒率は95%。
2.発見と治療の状況
(1)がんの進行
①1個のがん細胞が10年から20年で1センチほどに成長する。(30回ほどの分裂)
1センチ未満では、早期発見は困難。
②1センチ から2センチまでの成長は1、2年程度(3回ほどの分裂)
③その後どんどん増殖していく。
(2)早期治療
早期治療はこの②の段階、1、2年の間が勝負だ。
多くのがんは、放射線治療4回程度(1回数十秒)の通院治療でも治ってしまう。
私の膀胱がんもそのようにしてたちまち治った。
3.日本はがん対策後進国
(1)諸外国と比べての対策・啓発の遅れ
①全国医療機関のがん情報を集約し始めたのはようやく2016年
②原因についての無知
「おこげを食べない。」などおよそ対策にならない。
1トン単位で食べるのでなければ原因にはならない。
「遺伝」は原因の5%程度にすぎない。
「紫外線を浴びない」なども間違い。
「受動喫煙対策」にいたっては、WHO から前世紀並みと酷評されている。
男性の場合
原因の3分の1はたばこ。
20年前の生活習慣が今になってがんとして現れている。
原因の3分の1はたばこ以外の生活習慣。お酒、太りすぎ・痩せすぎ、食生活
残り3分の1はその他。偶発的な運としか言いようのない要素がある。
女性の場合
比率逆転。生活習慣が男性より良好。3分の2が生活習慣以外。
女性の場合、乳癌子宮がんなどが多い。
これは30代40代の病気。
女性の職場進出の結果「働く女性にがんが増えた」とみられるようになった。
③大腸がん:食生活の欧米化で日本でも増えている。
しかし、人口比では日本はアメリカの2.6倍
(人口構成等の問題はあるが、欧米では漸減しているのに日本は増加している。)
④胃癌は減っている。
原因となるピロリ菌が冷蔵庫の普及で減少しているからだ。
ある調査では、中学3年生で4%、70代は80%。
原因を見極めて効果的な対策を打つべきだ。
(2)がんへの誤ったイメージ。
「不治の病」「辛く苦しい治療」
特に症状はない大丈夫と思い込み、がんが発見されたら苦しむから検診を受けない。
がん告知をしたとたんに自殺率が急増するなど。
早期発見・早期治療すれば、苦しむこともなくすぐに治る。
末期のがんでも医療用の麻薬を適切に使えば苦痛は防げる。
医療用麻薬の使用が欧米に比べて異様に低い。ドイツの20分の1。
3.企業が行うべき対策
がん対策基本法の2016年改正で、両立支援は事業主の責務となっている。
(企業側の「事業主の責務」を設け、働く人ががんになっても雇用を継続できるよう配慮することを明記)
①我国の年齢構成の高齢化。高齢就業者の増加
移民を受け入れない以上、避けて通れない。
高齢就業者が増える以上、がんと仕事の両立は必須なのだ
②がんについての正しい知識を経営者。管理者が持つこと。
がんになった従業員はまず上司に相談する。
上司に知識がないと間違った対応になりかねない。
③がん検診の周知と普及をはかること。
④がん治療への支援:一番役立つのは短時間勤務を認めること。
それで十分治療できる。復職できるのだ。
【参考記事・参考資料】
1.中川先生の記事
2.中川先生お勧めの全体がわかる資料
(本文はこちらから)
大企業編、中小企業編の2種類が公開されています。
本文はほぼ同様。紹介されている事例が異なります。
3.厚生労働省の施策
銅鑼猫