新任役員必携この2冊!(「図解新任役員のための法務・リスクマネジメント」「社長のための残業時間規制対策」)
【登場人物】
M先輩(新任役員)
T後輩
T:M先輩、取締役就任おめでとうございます。
M:有難う。だけど、取締役って責任ばかり重くて大変みたいだ。
僕は現場の経験が長くて本部の人みたいに法律なり会計の知識もない。
とんでもない失敗をするんじゃないか、とヒヤヒヤしているんだ。
T:いい本がありますよ。
「図解新任役員のための法務・リスクマネジメント」(商事法務)
M:法律とかリスクマネジメントの専門家の書いた本じゃないか!
そんな本は、やたら文章が長くて説明が細かすぎる。僕のような現場にいた人間には、とても読みこなせないよ。
T:そうおっしゃらずに、ちょっとページを開けてみてください。
M:おやおや、2頁に一枚くらい図解があるね。何だか面白そうな図解じゃないか。
T:文章を読むのがお嫌でも、この図解を見て内容を想像してみてはいかがですか。
M:う~む。(パラパラ・・・)
「会社役員が絶対にやってはいけないこと」(本書第5章45頁)。何だかヤバそうだな。
T:本当にヤバいんですよ。
M:わ!ヤバそうな事がいっぱい書いてある。特別背任、汚職、インサイダー・・・。
外国の問題も書いてある!外国公務員への贈賄、米国反トラスト法違反・・。
大学の大先輩がお気の毒に米国の刑務所に収監されたことをきいたぞ。他人事じゃない・・。
そういえば、T君。君の勤めていた銀行では、運用業務でインサイダー取引を起こして、金融庁からたっぷり油を搾られたそうじゃないか。
T:・・・。あの時は社内が騒然としました。情報を提供する側にも問題があるということで「情報伝達者」も処罰するように法律が変わったのです(本書57頁)。
M:おや?ダスキンの肉まん事件が載っている(110~111頁)。
何と、役員が億円単位の損害賠償を命じられたのか。一体何をしでかしたんだ・・・。これはひどい!日本で使用が認められていない農薬を、中国の工場で使っていたのか。事態がわかったらすぐ公表して回収すれば良いのに、通報した業者に口止め料まで払って闇に葬ろうとしたのか。
消費者の口に入るものじゃないか。経営者として恥ずかしいと思わなかったのだろうか。現場を預かっていた人間として絶対に許せない。
裁判所からは「知られないで済む可能性に賭けた。」「経営者の責任を回避して問題を先送りした。」と厳しくいわれたんだね。
T:M 先輩。そんな常識・良識が大切だと思います。それが取締役の義務として「善管注意義務」「監視義務」「内部統制システム構築義務」等と定められています(本書21~22頁)。
M:そうか。難しそうな言葉だと思っていたが、考えてみれば当たり前のことだ。
これはしっかり読まないといけない。
T:はじめから丹念に読むというよりも、まずは手に取って図解を見ながら興味を持たれたところを読んでみて、関係のありそうなところを眺めてみる。そんな読み方でもいいと思います。手元に置いて、ニュースで気になることがあればこの本で探してみる、そんな使い方でもいいと思います。
M:う~む。有難う。よし、会社と家と1冊ずつ置いて、何かあればめくってみよう。
T:今度、役員研修のテキストに使おう、という話が持ち上がってるそうです。
講義を聴くだけではなく、ディスカッションを取り入れたりして本当に身についた知識・判断力の養成を図るんだそうです。
M:いいじゃないか。やってやろう。先輩役員たちに負けないぞ!
T:その意気です!
M:ところで話は変わるが、「働き方改革」が国会で大詰めじゃないか。
これについてわかりやすい本はないかね。
T:1冊おすすめします。
鳥飼重和・小島健一監修「社長のための残業時間規制対策」(日経MOOK)です。
働き方改革のうちの残業時間規制対策について、わかりやすく書かれています。
M:何と、過労自殺が株主代表訴訟の対象にもなるのか・・⇒【参考1】
過労死・過労自殺は、会社を潰し、経営者にとっては身の破滅、関係した管理監督者なども莫大な損害賠償責任を負うことにもなりかねない、ということなのか。
これも読みやすそうな本だね。まずは残業時間規制対策から、しっかり勉強してみるよ。
M:この問題は、私の知り合いの社会保険労務士の銅鑼猫さんが、紙芝居形式でもYouTube に投稿しておられます。ご覧になってはいかがですか。⇒【参考2】
T:YouTube!便利な世の中になったものだ。学び方にも情報発信の仕方にも様々な工夫が必要なんだね。しっかり勉強させてもらうよ。
【参考1】肥後銀行代表訴訟事件
(社長のための残業規制対策32頁、日経新聞2016年9月5日「過労自殺巡り株主代表訴訟 肥後銀元行員の遺族・提訴」他)
肥後銀行(熊本市)に勤務し過労自殺した男性(当時40)の妻が、当時の役員11人の経営責任を問い、計約2億6千万円を銀行に賠償するよう求める株主代表訴訟を提起。
男性はシステム更改業務等に従事。月200時間を超える時間外労働の末、鬱病を発症し自殺。労災認定を受けた。
妻ら遺族から銀行への損害賠償訴訟で銀行に1億3000万円の支払いを命ずる判決確定。妻ら遺族は、男性から相続した株式の株主の立場で株主代表訴訟に至る。
【参考2】紙芝居で考える「働き方改革」(過労死は会社を潰す。仕事と介護の両立)
銅鑼猫