シェエラザード 終演の涙 二度目の涙(アウローラ管弦楽団第33回定期演奏会)
アウローラ管弦楽団 第33回定期演奏会
2025年5月6日(祝)13時半開演 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:米津 俊広
序曲「フェルガナの休日」(R.M.グリエール)
組曲「コーカサスの風景」第2番「イヴェリア」
(M.M.イッポリトフ=イワーノフ)
交響組曲「シェエラザード」(N.A.リムスキー=コルサコフ)
そしてついにシェエラザードが幕を閉じたとき、コンサートミストレス(女性コンサートマスター)が涙ぐんでおられました。
名演でした。
実はアウローラ管弦楽団は2014年10月の第10回定期演奏会でシェエラザードを取り上げておられたのです。
そのとき、まさに開演直前にコンミスのバイオリンの大事な弓が折れてしまいました。
「あまりのショックと混乱で号泣するしかなかった。しかし無情にも 開演時間は迫る。」
(出演者はすでに着席、コンミスの登場を待つばかり)
「もう泣いている場合ではない。私は立ち上がり、何年も毛替えをしていないスペアの弓に松脂をこれでもかと塗りたくった」
(その弓をもって登場)
「案の定、バイオリンは全然鳴らなかった。チューニングの時点で絶望した。それでも突然表舞台に引っ張り出されたスペア弓は、シェエラザードで次の弓にバトンを渡すまでの間、十分に役目を果たしてくれた。」
「シェエラザードを弾き終えた瞬間、私は泣いた。自分で自分をほめたい。某オリンピアンのあの言葉が浮かんだ。」
そして、久しぶりにシェエラザードを取り上げられた本日の演奏会のパンフレットに、コンミス松本様のこの体験が掲載されていました。
本日の涙は、渾身の名演に裏打ちされた二度目の涙だったのです。
【本日のプログラム】
師から弟子へ引き継がれるロシア音楽の底力をいかんなく発揮した名曲の連続です。
序曲「フェルガナの休日」(R.M.グリエール)
グリエールはモスクワ音楽院で後述のイワノフから薫陶を受け、後に同音楽院教授となり、その後、ハチャトリアンなど錚々たる作曲家を輩出します。
私はこの人の名前も曲も初めてでした。
でも大地と民族の力と色彩豊かな、4管編成、増強された打楽器群の迫力と情緒に身をゆだねるばかりでした。それで充分です。
組曲「コーカサスの風景」第2番「イヴェリア」(M.M.イッポリトフ=イワーノフ)
イワノフはリムスキー・コルサコフのお弟子さんです。
「コーカサスの風景」一曲で名を成した方ですが、他の曲はあまり知られておらず、オケ仲間では「あの一発屋さん」として知られているそうです。
コーカサスの風景の続編としてつくられた「「イヴェリア」は、あまり成功しなかったそうですが、本当?と思いました。
この曲の懐かしくも美しい響きは忘れられません。イワノフ先生にともかく拍手。
あの最後のグルジア行進曲の勇壮なメロディーが頭の中を駆け巡っています。
そしてついに・・
交響組曲「シェエラザード」(N.A.リムスキー=コルサコフ)
そしてついにあのバイオリンソロが始まります。
暴君の改心を促すために身を捧げたシェエラザードの物語です。
幾度も聞いたことのある曲ですが、初めて聞く曲のような新鮮さに驚きました。
とりわけ、ソロの楽器一つ一つの丁寧な情感こもった演奏。
私はファゴットに特に惹かれました。なつかしいひなびた響きです。
かつて聞いた時の感想を思い起こしながら、新しい喜びを付け加えながら、それでも曲はついに幕を閉じます。
シェエラザードの最後の呼びかけのバイオリンソロ。
ついに暴君は改心します。
この管弦楽団の一つの売り物は、曲目解説の充実です。
実に詳しく、しかもウィットにとんだ長文の解説は、演奏前の楽しみであり、演奏後の貴重な思い出になるのです。
シェエラザードは、解説によると「スーパー女子高生」。これは名言!
確かにJK(女子高生)の年代の若い女性です。妹のドニアザード「スーパー中学生」とともに、暴君の寝室に堂々と乗り込み、その心をわしづかみにする女傑なのです。
ともかくも、大型連休最後の日に素晴らしい時間を過ごせたことに感謝します。
(アウローラ管弦楽団HP)
ロシア音楽を中心に取り上げるオーケストラです。
私は2019年(令和元年)5月11日の創立10周年記念第21回定期演奏会
ショスタコーヴィッチ交響曲第7番ハ長調「レニングラード」で、初めてこの楽団を知りました。
レニングラードをちゃんと聴いてみたかったのです。
その時に一気に書いたブログを掲載します。
虎猫