toranekodoranekoのブログ

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すみだのレニングラード

2019年(令和元年)5月11日
すみだトリフォニーホール
アウローラ管弦楽団創立10周年記念第21回定期演奏会
ショスタコーヴィッチ交響曲第7番ハ長調「レニングラード」


1942年8月9日レニングラード
ドイツ軍に包囲され、飢餓に苦しみ骨と皮ばかりになった市民がフィルハーモニーホールに集まりました。
同じく骨と皮ばかりの楽団員が猛練習の成果を市民に届けます。
ショスタコーヴィッチが愛する街レニングラードのために作曲した交響曲が、現地で初めて演奏されたのです。
音源は残されていません。ただ、1枚の写真が残されているだけです。
900日に及ぶレニングラード包囲を市民が耐え抜いた事実。それだけが当日の演奏の唯一の証です。市民に不屈の勇気を与えた演奏だったのです。


2019年5月11日
その交響曲が、すみだトリフォニーホールで演奏されました。
アウローラ管弦楽団はロシア音楽を中心に演奏するアマチュアオーケストラ。
アウローラ(Аврора)は、ロシア語で「暁の女神」。転じて「夜明け」という意味でも使われます。
ステージには、100人を超える奏者。客席は1300人を超える聴衆。


昨日のことなのに、もはや断片的なイメージが頭の中を駆けめぐるだけです。
CD で聴いたことはありましたが、生で聴いたのは初めてです。
厚い弦の響き、ピッコロソロの佇まいに耳を奪われているうちに、小太鼓の響きが戦を暗示しつつ執拗に迫ってきます。それが25分にも及ぶ第1楽章のほんのさわりの部分です。大音量が叩きつけられ、聴衆は身じろぎもせずに座り続けるしかありません。
短い間奏曲風の第2楽章に、ひとときだけ心休む。
その後は、第3楽章第4楽章が続けざまに演奏されます。
木管と弦のコラールの掛け合い、低弦のピチカート、ビオラのパートソロ、祈りの賛歌。
左右に配された3管ずつのトロンボーンが咆哮し、要所では3組のシンバルが同時に打ち鳴らされます。
そして、圧倒的なフィナーレ。しかし勝利でも歓喜でもありません。
不思議な重いものを聴衆の心に置き去りにされたまま曲を閉じます。
鳴り止まぬ拍手。



すみだトリフォニーホールをでると、ちょうど東京スカイツリーが真正面に見えました。
快晴の東京です。飢餓もなく死の恐怖もないこの街の姿です。



虎猫

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