「江戸前のパリの街角」小説版(その1)
(砧公園)
【アーニャのご挨拶】
皆さんこんにちは。
アーニャです。本名は明日香、花のJK(女子高生)です。
年金生活者のニックパーパチカと多言語活動をしています。
ニックパーパチカが、ブログ仲間の虎猫さんの入院のときの思い出(冒頭のブログ)を元にして、私の妹の麗花を主人公に小説に仕上げました。
懸賞に応募したそうですが、あっさり落選したのでこのブログで紹介するんだそうです。
読んでやってください。
なお、麗花は幼稚園のときに母と一緒に韓国にホームステイに行きました。
それから5年、立派な小学生です。
ブラジルから来た男の子との初恋に夢中になっています。
そんな麗花がまだ小さかったときを想定して、主人公にしたそうです。
3回に分けて掲載します。
【登場人物】
①主人公:れいか(幼稚園児の女の子)
②れいかのママ
③れいかのおばあちゃん(入院中)
④おじさん:
同じ病院に入院している60歳代の男性。
れいかたちがおばあちゃんのお見舞いに行くときに、病室のベッドから声をかけてくれて親しくなる。
⑤おばさん:おじさんの奥さん
おばあちゃんが入院したのでママと一緒にお見舞いに行きました。
おばあちゃんの病室は廊下の奥です。
廊下を歩いていたときに、ベッドで寝ているおじさんが声をかけてきてくれました。
「こんにちは。」
とても明るい声でした。
私も思わず「こんにちは!」
大きな声で返事しました。
ママも笑顔で「こんにちは。」と言いました。
おばあちゃんの病室につきました。
おばあちゃんはとても元気そうでした。
「検査の結果が出たけれど、とても良い状態だそうで、ひと月ぐらいで退院できるってお医者さんが言ってたわ。」
「よかったですね。また時々お見舞いにきます。」
私はおばあちゃんに聞いてみました。
「さっき、おじさんが『こんにちは。』ってあいさつしてくれた。
私も『こんにちは!』って大きな声でご返事したの。」
おばあちゃんはうなずきました。
「あ、あのおじさんね。
私も入院するときに声をかけてくださったの。
私より2か月ほど前から入院されている方よ。
お話を伺ってみたわ。
入院された時に、朝起きて通りがかる患者さんに『おはようございます。』って挨拶したんだけど、誰も返事してくださらなかったんだって。
この病棟って結構重い患者さんがいらしゃるのよ。
皆さん辛い思いで、挨拶する気持ちもなくなったのかしら。
そんなこと考えたんですって。
それでも、次の日も次の日も『おはようございます。』って挨拶を続けたんですって。
挨拶してくださる方は殆んどいなかったって。
めげずに毎日毎日『おはようございます。』を繰り返しているうちに、少しずつ挨拶を返してくださる方が増えてきて、今ではみんな挨拶するのが当たり前になったのよ。」
ママが言いました。
「素適なお話ですね。挨拶だけで周りがみんな明るくなるんですね。」
「そうよ。
この病院は午後が面会時間でしょう。面会にやってくる人にも『こんにちは。』って挨拶をなさるのよ。
お見舞いの人も、皆明るく『こんにちは。』って挨拶されるんですって。
おじさん、こんなこともおっしゃっていたわ。
『そんなふうにして、挨拶を交わしていると、自分がパリの街角のカフェで、道行く人々と明るく挨拶をかわしているような、そんな気がしてきましたよ。
この病院は西新橋でしょう。
病棟の窓から東京タワーが見えるけれど、あれはエッフェル塔、窓の下には日比谷通りのようにも見えるシャンゼリゼ通り。
ただあいさつだけで、江戸前のパリの街角が目の前に現れたんですよ。』」
帰るときに、またおじさんと目が合いました。
「さようなら。またおいで。」
そう言ってもらえました。
ママも私も「さようなら!」と元気でご挨拶しました。
何回かお見舞いに行きました。
いつも『こんにちは』帰るときは『さようなら』と言いました。
(続く:1月26日9時、27日字9時完結)
ニック&アーニャ