toranekodoranekoのブログ

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トヨタ自動車パワハラ自殺事件:同社への意見具申

トヨタ自動車でパワハラ自殺事件が起きました。
私なりに考えるところがあり、7月26日付で同社社長様に当てて直接お手紙を差し上げました。8月6日付で同社お客様相談センターご担当の方からご返事をいただきました。
「私の手紙について社内関係部署に申し伝え今後の参考にさせていただく」というご趣旨でした。


私のお手紙全文をブログでも掲載いたします。
ご関係の方ご関心のある方の目に留まり、このような不幸を無くすために少しでもお役に立てれば幸いです。


【以下がお手紙本文です。メールでなく、普通郵便でお送りしました。】



                              2021年7月26日
トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長
豊田 章男 様               〒168-0072
                      杉並区高井戸東4-13-21-207
                      高井戸東デュープレックス
                      社会保険労務士 玉上 信明


私は社会保険労務士の玉上 信明(たまがみ のぶあき)と申します。70歳です。
敢えて社長豊田章男様に、直接に突然のお手紙を差し上げる非礼をどうかお許しください。


貴社のお問い合わせ窓口https://www.toyota.co.jp/faq/inquiry/にも7月5日に同趣旨のご意見を申し上げました(末尾添付)。おそらく貴社内で顧みられることなく埋もれているでしょう。どうしても社長豊田章男様のお目に留めていただきたく、このような形でお手紙を差し上げたものです。
私は前職の三井住友信託銀行株式会社で、法務コンプライアンスに長く従事していました。
同社で不正不祥事への対応に取り組み、同社退職後も不正不祥事のセミナーや執筆などを続けております。
愛車はカローラです。
不正不祥事に携わってきた者として、カローラ愛用者として一言申し上げます。


私の目で見て、貴社の今回のパワハラ防止再発防止策には様々な疑問があります。
そもそも、この問題がなぜ上層部まで報告されなかったということも含めて、考え直されるべきことが様々あると思います。
私が三井住友信託銀行で取り組んできたことも参考にしていただけるかもしれません。


1.この問題の発覚に時間がかかった理由
貴社の中で、この手のパワハラ罵詈雑言が日常的に横行していたからでしょう。
この上司の「なめてんのか、やる気ないの」「おまえが休むと俺の立場も悪くなる」といった類の発言は周りの人も聞いていたはずです。
ごく当たり前に多くの上司がこの類の暴言を部下に浴びせており、周りの人も、間隔が麻痺していたのでしょう。また、よくあることですが、社内の多くの皆様が、この類の暴言を教育的な指導等と勘違いしていたと思われます。
社内でこの類のパワハラがどの程度横行していたのか、実態調査はしっかり行っておられるのでしょうか。このような暴言は、絶対に許されないということを、社内で具体的に徹底されているのでしょうか。


2.貴社の再発防止策はピントが外れているのではないか。
思うに、貴社の再発防止策はかなりピントが外れているようにも思われます。
貴社の「2021年06月07日労務問題の再発防止に向けた取り組みについて」の項目番号に基づいて若干コメントします。文脈で読み取れる範囲での気づきを申し上げるものであり、的外れであればどうかお許しください。


(1)声を出しやすい職場づくりに向けた取り組み
①匿名通報窓口
匿名通報窓口に本当に通報が来るでしょうか。内部通報制度で通報すれば、必ず犯人探しが始まります。「ばれれば職場内でいじめられ、あるいは、次の人事異動でとんでもない部署に飛ばされる。」そのように社員の皆さんは考えるでしょう。
多くの会社で、内部通報窓口は匿名も受け付ける前提で設置されていますが、実際には殆んど役に立っていません。


②若手社員へのアンケート(報道によると、入社3年目までの若手)
若手社員へのアンケートをなぜ入社3年目までにしているのかが理解できません。
全役職員向けのアンケートを考えるべきです。この点は後述します。


(4)マネジメントに対するパワーハラスメントの意識啓発
「令和2年4月より、すべての幹部職・基幹職を対象に、パワーハラスメント防止の教育を再度実施しております。」
なぜ、幹部職・基幹職のみを対象にされるのでしょうか。
パワハラを受ける立場の若手社員も含めてパワハラ防止教育を徹底するべきです。
「自分の上司からこのような対応をされた場合には、会社が禁止するパワハラに該当する。」ということを徹底すべきです。この点も後述します。
さらに申し上げれば、役員の方々への意識啓発はどのようにされているのでしょうか。
パワハラ意識啓発教育がもっとも必要なのは役員の皆様のはずです。


3.私が三井住友信託銀行で実施して効果のあった方法(全役職員向け研修)


三井住友信託銀行では全役職員向けに定期的にコンプライアンス研修を実施して参りました。メニューは様々で、ほぼ毎月のように研修を実施してきました。
(コンプライアンスの基礎、反社会的勢力への対応、インサイダー取引防止、独占禁止法、マネーローンダリング、金融商品取引、等。テーマによっては年に4回実施。)
そこで効果のあった方法をご紹介します。
①研修はe ラーニング・長くとも20分程度で完了できる内容
いつでも好きな時間に学べるようにしています。長くとも20分程度で完了できるまでに内容を絞り込み、その代わり、メニューも回数も豊富にそろえてきました。


②全役職員共通の内容
社長から新入社員に至るまで同一の内容の研修です。
全役職員がコンプライアンスについての共通の認識の基盤を持つように計画したのです。


③研修アンケートを内部通報の一つとして活用
毎回の研修アンケートで「研修内容は理解できましたか。」等の一般的な質問の後に
「その他コンプライアンスでお気づきの点、疑問の点があれば自由にお書きください。」という自由記入欄を設けてきました。
思いがけない情報も入手できました。全役職員向け必須研修で、アンケートもその一環として回答を求められるので、心理的抵抗なく気軽に記入できたのだと思われます。
 もちろん、ピンポイントで的確な情報が入手できるわけではありません。
しかし、広範な役職員から情報を得れば、更なる調査の手掛かりになります。不確かな情報と見えても、いわゆる「ヒヤリハット情報」もありえます。単なる噂話と思えても意外な真実が隠れていることもあります。
これらを通して組織運営上の問題点への気づきも与えられるのです。


 内部通報制度は最後の命綱として必須でしょう。しかし、それ以外に様々なチャネルを設け、大事に至る前に異常を検知できる仕組みを構築・運営すべきだと考えます。


4.もう一言:貴社の不祥事はパワハラのみではない。
もう一言申し上げておきます。貴社の不祥事は、パワハラのみではありません。
最近発覚した「不正車検」は大きく報じられましたが、ネット上では貴社における労災隠しやヤミ残業などの問題も頻繁に取り上げられています。
これらの問題について貴社で事実関係をどれだけ確認し、必要な対策を打ってこられたのでしょうか。
この機会に真摯に見直されるべきです。



(以下、お手紙では玉上の連絡先、不正不祥事関係の記事やセミナー等も掲載しております。連絡先は省略し、不正不祥事関係の記事セミナーの部分を掲載いたします。
8月14日午後11時追記:トヨタ窓口に送信した当初の意見も参考2として追加しました。)


(参考1)私の不正不祥事関係の記事やセミナー等
①日経新聞2017年1月30日朝刊「私見卓見」
ヤミ残業は不正の温床になる。
(この記事は、手前味噌ですが大きな反響を呼びました。ぜひ、貴社の役職員の皆様に一読いただきたいものです。)


一般社団法人日本公認不正検査士協会
不正対策教材「現場管理者・本部担当者のための実践ガイド」


一般社団法人リーガル・リスクマネジメント研究機構https://lrm.or.jp/
2018年9月12日(水)セミナー
不正・不祥事防止の2つの視点~監査と職場管理~


私のブログで概要をご確認いただけます。
LRセミナー18/9/12(水)「不正・不祥事防止の2つの視点~監査と職場管理~」お礼


④パワーハラスメント関係の執筆の一例
エムスリーキャリア
(産業医紹介の日本最大級のサイト)
2020年9月2日パワハラ防止法遂に施行!人事労務担当者が今取り組むべき対策と定義を徹底解説


ベリーベスト法律事務所
リーガルモール
2021年1月28日社内研修で使える「パワハラ防止法」の概要【弁護士が解説】
(私が執筆協力した記事です。)


(参考2)貴社お客様相談センターへの問い合わせ
(メールは改行がなく、読みづらいので適時改行したものを記載しました。)


Re:【問合せ】貴社のパワハラ防止対策は理解に苦しみます。


<ご入力内容>
受付日:2021/07/05 20:38:22
お問合せ車名:ソノタ
車種の詳細:その他 :
タイトル:貴社のパワハラ防止対策は理解に苦しみます。
ご質問・ご要望の内容:
社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)とします。前職は三井住友信託銀行株式会社で、法務コンプライアンスに長く従事、現在も不正不祥事対応に取り組んでいます。私の目で見て貴社の今回のパワハラ防止対策に大変疑問があります。
1.匿名通報窓口は、まず役に立ちません。通報がばれれば、いじめられ飛ばされると
考えてしまうからです。
2.若手にアンケート、幹部職・基幹職にパワハラ研修、という年代別の対策も理解で
きません。
3.三井住友信託銀行では、全役職員向け同一内容のコンプライアンス研修を、テーマを変えて毎月のように実施しました。全役職員がコンプライアンスの共通の知見を持つことを狙うもので、15分程度のelearning 研修です。研修アンケートの中で「その他コンプライアンスでお気づきの点、疑問の点があれば自由にお書きください。」という記入欄を設けました。思いがけない情報も入手できました。全役職員向け必須研修で、アンケートもその一環として回答を求められるので、心理的抵抗なく気軽に記入できたのでしょう。ぜひ一度ご検討ください。詳細はいつでもご説明いたします。


お名前:玉上 信明
ヨミガナ:タマガミ ノブアキ



銅鑼猫

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