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今こそ新型コロナに立ち向かう(26)東京オリンピック開催中止は法的に可能、日本は損害賠償義務を負わない。

(調布飛行場)


(参考)7月2日追記
末尾に「開催都市契約2020」を掲載しました。


五輪中止の権限が日本政府にないとか、中止したら莫大な損害賠償請求を受ける、といった議論が横行しているようです。
初歩的な間違いです。
日本側も五輪中止を決めることは可能です。それにより損害賠償の義務を負うこともありません。
本日の日経新聞私見卓見欄の民法学者角紀代江先生の議論をお読みください。


6月9日日経新聞私見卓見欄
五輪中止、日本に賠償義務なし 立教大学名誉教授(民法) 角紀代恵


要点は次の通り。
①「開催都市契約2020」にて、IOC は戦争内乱や参加者の安全が脅かされる場合に大会を中止する権利を有する、とされています。
これはIOC が中止の判断をしても損害賠償義務を負わない、という定めに過ぎません。


②日本側に中止の権利がない、といっているわけではありません。
道義的にはともかく、法律的には日本側も中止を決めることは可能です。


③当然のことながら、日本が中止を決めたときに、IOC は開催を強制する執行力などありません。そもそも当事者がその気にならないと実現できない契約ならば、相手方が実現を強制できるはずもありません。


④では、IOC は日本に損害賠償請求ができるのか。
開催都市契約には、明記されていません。
この場合はこの契約が準拠する法律により、判断されることになります。
準拠法はスイス法です。日本やスイスが採用している大陸法では、契約を履行しないことが「債務者の責に帰すべからざる事由」による場合は、損害賠償の義務を負わない、とされています。


⑤新型コロナによるパンデミック状況で開催ができないというのは、債務者(日本)の責めに帰すべからざる事由です。従って、日本が損害賠償義務を負うこともありません。


しかし、私に言わせればいわば当たり前の議論です。
法律は不可能を要求するものではありません。
契約書の内容がどうであれ、不可抗力など当事者の責めに帰すことができない事由により開催できなかった場合、損害賠償の義務を免れるのは、当然のことです。
もっと言えば、国民の生命と健康、さらには世界のパンデミックを防ぐというのは、契約の条項よりも優越的な法益です。優越的な法益による違法性の阻却は、法律の一般原則です。


菅総理にこの程度の当たり前を進言できる人が、周囲におられないのでしょうか。
そもそも菅総理は、こんな法的な常識すらご存知ないほど無知なのでしょうか。



【なおスイス法専門家のこのような見解もあります。
法律家らしいリスクの指摘ですが、いささか技術的にすぎるのではないかと思います】




【7月2日追記】開催都市契約2020は次の通りです。
英文契約も日本語訳も掲載されています。
ご存知の方も多いと思いますが、英文契約書はともかく読みにくいです。日本語訳になると更に読みにくいものです。
それでも、必要なときにはしっかり読みましょう。



銅鑼猫

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