寄り添う力
これは、2012年3月生まれて初めて車椅子に乗ったときの体験です。
東京カベナント教会ブログ「重荷をおろして」に掲載していたものです。
生まれて初めて車椅子に乗りました。
急な喘息発作で病院に行きました。地下鉄駅から病院までのわずかの距離もふらふらしながら、本当にたどり着けるか、という感じでした。
病院では診察前にまず検査が必要と言われましたが、私が立つのも困難とみられたのでしょう。
「車椅子を用意します。係の人が来ますので待っていてください。」
そして、きりっとした制服姿の若い女性が車椅子をもってこられました。
「スマイルさん」といって、その病院でボランティアをなさっている方なのです。
こうして生まれて初めての車椅子です。
自分の後ろに寄り添い、車椅子を動かしながら語りかけてくださる方がいるということで、こんなに心静かな平安な心になれるものかと驚きました。
乗っていた時間はたぶん10分くらいのものでしょう。
それでも、至福のひとときだったのです。
車椅子に乗ると、当然目線が低くなります。たぶん地上1mくらいでしょうか。その位置から車椅子を押していただきながら、前に進むといつもと違う景色が見えました。
車椅子は人間より幅が広く、廊下の中央を進むのですが、前にいる人に声をかけて譲っていただきながら進みます。
方向転換も容易ではありません。一定の取回しのスペースが必要です。エレベーターで、検査室の前で、周囲の人に断りながらゆっくりと方向を変える必要があります。
ボランティアさんが静かに声をかけると、お母さんに連れられた腕白小僧があわてて道を譲ってくれました。
エレベーターで乗り合わせた人が「何階ですか。」と声をかけ、開くドアを支えてくださいました。
さいわい、私の発作は点滴だけできれいに解消しました。
自分も人の車椅子を押す機会があれば喜び、感謝して押したい、そう考えました。
幸いなことよ、弱っている者に心を配る者は。主はわざわいの日にその人を助け出される。(旧約聖書詩編第41章第1節)
虎猫