toranekodoranekoのブログ

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経営者の誓い(過労死、未払い賃金時効、ハラスメント)

私の顧問先の中小企業経営者江戸豊様から年末にお手紙をいただきました。
江戸様のご了解をいただき、全文掲載いたします。


銅鑼猫様


今年1年お世話になりありがとうございました。
年末を迎えるに当たり、感ずるところをしたためました。
お手隙の折にでもご笑覧ください。


一つは、過労死・過労自殺の問題です。
労働災害で死亡者が出たら、経営者はうちひしがれます。
20年ほど前、先代の経営者のときに、当社でも労災で死亡事故が発生しました。
先代社長は完全に打ちのめされ、会社をたたむことまで考えました。
ところが、ご遺族の奥様が「主人の死を無駄にしないでください。会社を立て直してください。」とおっしゃいました。
先代社長は役職員全員を集めて「必ず会社を立て直します。」と墓前に誓いました。
毎年、その方の命日には役職員全員が黙祷をささげています。
幸いにその後大きな事故は起こらず、労災防止の表彰をいただくまでになりました。
過労死・過労自殺が起こった会社では、亡くなった方の命日に黙祷をささげておられるのでしょうか。毎年毎年、誓いを新たにしておられるのでしょうか。
過労死・過労自殺は会社の恥、国の恥です。
誓いを新たにすることから、始めなければなりません。


二つ目は未払い賃金の請求の消滅時効の問題です。
民法改正で消滅時効の原則の期間が5年になりました。
ところが、厚生労働省の審議会の議論で、未払い賃金の請求の消滅時効は3年にする方向で議論がまとまりそうだと伝えられています。
経営側が「システム改修・サーバー拡大で1社数千万円程度の費用が発生する」「特に中小企業にとって過大な負担となる」などの理由で反発し、結局当面3年で折り合いをつけることになったそうです。
これまでは民法の短期消滅時効が1年であったところを、労働基準法で賃金債権は2年として優遇されてきました。今度は賃金債権の方が民法原則よりも不利益になります。
経営側の主張は恥ずべきことだと思います。
労務の提供を受ければ賃金を支払うのは会社の義務です。未払い賃金は、会社が払うべきものを払っていなかったということです。それだけでも恥ずかしいことなのです。
民法改正で消滅時効の原則期間が5年に伸びることは、以前からわかりきっていたことです。賃金債権の時効も5年になるという前提で準備しておくべきだったのです。
ぎりぎりになってから、システム改修費がどうの、負担が重いとか泣き言を言って、払うべきものを払わずに済ませようとは、どういう性根の持ち主でしょうか。
未払い賃金が生じないように労働時間を厳格に管理することが筋です。それで未払賃金が生じたならば責任は経営者にあります。労働者にはありません。
払うべきものをケチるような会社で、労働者が誇りを持って働いてくれますか。
時効は利益を受けるものが「援用」して初めて効果が生じます。私は会社の方針として、賃金債権については消滅時効3年ではなく、少なくとも5年までは時効の援用はしません。そのように役職員にはっきりと伝えます。
仮にも当社の管理の不行き届きなどで、未払い賃金が生じたのなら時効の援用は一切せずに調査できる限りの未払い賃金を払います。
それが経営者としての矜持です。


三つ目は、パワーハラスメントの問題です。
厚生労働省の指針案では、6つの類型ごとに該当する例、該当しない例、が挙げられています。
例えば次はどういうことなのでしょうか。
<暴行・傷害(身体的な攻撃)>
 (該当すると考えられる例)
・ 殴打、足蹴りを行うこと。
 (該当しないと考えられる例)
 ・ 誤ってぶつかること。


殴打、足蹴りを怪我をしかねないものを投げつけるのが暴行・傷害に当たるのは当たり前のことです。
「誤ってぶつかること」がなぜ該当しないのでしょうか。
わざとぶつかっておいて「すまない、間違ってぶつかった」といえばお目こぼしになるというのでしょうか。わざわざ「該当しない例」に挙げること自体が疑問です。
誤ってぶつらないように配慮をするのは、同じ職場の仲間として当然のことであり、ぎりぎりどこまでならセーフか、などと考える方がおかしいのです。


誤ってぶつかったりなど、お上が許しても、私は経営者として許しません。厚労省の指針など無視して我が社独自でしっかりとした指針を作ります。


経営者は何を求めるべきか。
日本の経営者は少額の報酬で重い責任を引き受け、地下鉄で出社し、社員食堂で若い社員と一緒に食事をしました。
アメリカの経営者のように高額の報酬を受け取り、簡単に社員をクビにすような振る舞いをしませんでした。
アメリカでは「日本を見習え。」という声が広く起こっていました。
その時、日本は輝いていました。


その後、日本の経営者は労働者の勤勉さと忠実さにあぐらをかいて、待遇を切り下げ、ひたすら金もうけに突き進みました。
それが今の日本です。


私は一介の中小企業経営者に過ぎません。しかし、経営者としての誇りは忘れていないつもりです。
この国をもう一度輝かすために、私なりに努めて参ります。


この1年本当にありがとうございました。
良い年をお迎えください。


                                江戸 豊


銅鑼猫

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