toranekodoranekoのブログ

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財務次官の女性記者へのセクハラ疑惑問題を考える視点

この問題については、議論が錯綜しているようです。私なりに考えるためのヒントを思いつくまま纏めてみました。報道・取材・テレビ朝日の対応についてです。


【要点】
1.「無断録音」「週刊新潮への情報提供」には問題はない。正当な行為である。
2.テレビ朝日は、事件をもみ消そうとした。社員への安全配慮義務を怠った。
3.マスコミに自浄作用はない。野田大臣の調査に期待する。
4.総論:「他に方法はなかったのか。」など後からの批判はやめよう。


1.「無断録音」「週刊新潮への情報提供」には問題はない。正当な行為である。
 無断録音や他社への情報提供について、問題視する意見があるようです。およそ的外れです。
①ハラスメント発言は取材の場での破廉恥行為。「取材」の定義にも該当しない。
 取材とは報道の目的で情報を集めるために、取材する側と取材を受ける側の信頼関係に基づいて行われる行為です。今回のハラスメント発言は、取材の場で、取材と無関係に行われた破廉恥行為です。取材の定義にそもそも該当しません。取材する側・取材される側の信頼関係を踏みにじった行為です。およそ取材相手の保護に値しません。


②録音は、セクハラ被害者が加害行為を立証するための止むを得ない必要な行為だったのであり、無断でせざるを得なかったのです。
 なお、我国では、相手に断りなく録音しても(秘密録音)、証拠能力は認められており、個人情報保護法上も問題はない、とする判例があることも念のため指摘しておきます(詳細は、例えば早稲田大学刑事法学研究会「相手方の同意を得ないで相手方との会話を録音したテープの証拠能力が認められた事例」
最高裁平成12年7月12日第二小法廷決定など参照)


③「週刊新潮への情報提供」はテレビ朝日社内で対応が行われなかったための一種の公益通報とも考えられます(厳密な要件は吟味が必要です)。
但し、少なくとも本件が事実であった場合、テレビ朝日や加害者が「他社への情報提供」「外部への無断通報」を主張することは信義則違反・権利の濫用にも該当しうると考えるべきです。
【参考】消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」よりQ&A
Q.職場でのパワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントに関する通報は本法の「公益通報」(本法第2条第1項)に当たりますか。
A.パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントについても、そのパワー・ハラスメントが暴行・脅迫などの犯罪行為に当たる場合や、そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます。


④仮に無断録音や週刊新潮への情報提供に何らか法的な問題があったとしても、被害者が加害行為を立証し、政府高官の破廉恥行為の拡大を食い止めるための止むを得ない行為だったのであり、「優越的法益による違法性阻却」の理論で違法ではない、と考えることが可能でしょう。


2.テレビ朝日は、事件をもみ消そうとした。社員への安全配慮義務をも怠った。
 報道の限りテレビ朝日は、社内での女性記者からの相談に真摯に向き合おうとせず、「二次被害の防止」などと称して事件をもみ消そうとしてきたのです。
女性記者が週刊新潮に事件を通報したために、やむなく抗議声明に至ったのです。この通報がなければハラスメント行為はいつまでも隠し通されていたでしょう。
 また、テレビ朝日は使用者として労働者(女性記者)への安全配慮義務(労働契約法第5条)があります。ハラスメント行為を防ぐため使用者としてやるべき義務を尽くしていなかったのです。例えば、慰謝料などの損害賠償請求等の提訴があれば、テレビ朝日は追求をまぬがれるのは難しいでしょう。
 今テレビ朝日が行うべきは、女性記者を守るための万全の配慮と行動、女性記者への謝罪、再発防止への真摯な取り組みです。


3.マスコミに自浄作用はない。野田大臣の調査に期待する。
 取材相手からのハラスメントなどの破廉恥行為は、他の報道機関の記者にも行われていたでしょう。野田聖子大臣が自ら女性記者への聞き取りを始めたというのは、勇気ある行為です。報道機関に任せていても、まともな対応はしない、と考えられたのでしょう。


4.総論:「他に方法はなかったのか。」など後からの批判はやめよう。
 録音と週刊新潮への情報提供は、非常に異例な行動です。そのことをもって「他に方法はなかったのか。」などという議論があります。
 緊急かつ重要な事態についての、1人の記者の勇気ある行動を、後になってから「もっといい方法はなかったのか。」と批判するのはやめるべきです。様々な選択肢の中でそのとき考えられる最善の方法をとったのであれば、それ以上責任は追及してはならない、と考えるべきです。


 私が銀行勤務時代から不正不祥事の調査について勉強して、調査の一般的な手順を取り纏めて、2月に日本公認不正検査士協会にてWEBラーニング(オンラインセミナー)として発行いただきました(教材の紹介について下記ブログを参照)。
秘密録音の問題などもその中で検討しています。改めて、この教材を多くの方にご覧いただき、参考にしていただくことを願ってやみません。
「不正・不祥事は他人事ではない。」Webラーニング(オンラインセミナー)開講!


【本件に関連するブログ】
財務省の「セクハラ調査」の異常さ
麻生太郎、危機管理の失敗


銅鑼猫

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