安全はすべてに優先する。新幹線台車の亀裂事故は大惨事になりえた。
新幹線は高速輸送鉄道です。
事故が起きたときの影響は計り知れません。
今回のJR西日本の台車亀裂では脱線事故が生ずる可能性があったとされますが、問題はそれだけにとどまりません。
新幹線は高速かつ過密な運転をしています。
後続列車の追突、対向車との衝突など幾編成もの列車を巻き込む重大インシデントになりかねなかったのです。
仮に衝突・追突を免れたとしても、高速列車で急ブレーキをかけるだけでも、乗客が座席にぶつかったり、網棚の荷物が高速で飛び散って乗客に当たるなど、死傷事故が生じかねなかったのです。
JR西日本は、このような危険を認識していたのでしょうか。
対策は極めて簡単です。異常を検知したらともかく最寄駅で止めて列車を点検する。乗客は別の列車に乗せる。場合によっては最寄駅に至らずともその場で止める。後続列車も対向列車も止める。
それしかないのです。
「大したことはない、大丈夫だろうと思った。」
重大事故発生のときに必ず耳にする言葉です。
多くの場合は調べてみたら大した問題ではなかった、ということに終わるでしょう。
しかし、千に一つ、万に一つの重大事故が隠れているかもしれないのです。
事故発生時の重大リスクを考えれば、「新幹線も時折止まることがある。」という不便は甘受すべきです。
JR西日本の報告書「新幹線車両の台車に亀裂などが発見された重大インシデントについて」では次のように書かれています。
「 岡山駅から車両保守担当社員が添乗して確認したところ、13~14号車間で「うなり音」を確認しましたが、指令員とのやりとりのうえ、指令員が走行に支障するような音ではないと認識し、運転を継続しました。においは若干ありましたが、継続的なものではございませんでした。
○車掌は、においがしたりしなかったりという状況だったとのことであり、運転に支障がある状況とは認識しておりませんでした。」
このやりとり・判断の異常さを認識すべきです。
指令所で運行の可否を個別に判断させてはならないのです。
異常検知時にはともかく止めるしかないのです。異常検知時に列車を運行させる権限は、指令所にも与えてはならないのです。
【参考】
JR西日本「安全考動計画2017概要」より
2.福知山線列車事故の反省
「お客様のかけがえのない尊い命をお預かりしている責任の重さの自覚が十分ではなかった。」
「安全対策は発生事象に対する対症療法が主体であり、社員の気づきや報告に広く耳を傾けることを通じて潜在するリスクを見つけるための方策を具体化していなかった。」
銅鑼猫