toranekodoranekoのブログ

虎猫・銅鑼猫など様々なブロガーが参加しているサイトです。クリスチャン、社会保険労務士、多言語活動家、女性キャリア官僚、科学ライター、うるさいばあさんまで、多士済々。お楽しみください。

クリスチャンブロガーが綴るブログです。
明るい高齢化社会、病から得た様々な宝、世の中の動きへの警鐘(銅鑼)を鳴らすこともあります。
ときどき大阪弁も出てくる聖書物語もお楽しみに。
主催者のほか様々な協力者も登場します。

土星の輪

  会社の独身寮にいた時のことです。
いつも元気な友人が最近ふさぎ込んでいます。
食事の時にわいわいがやがやと仲間と一緒に食べるのが常だったのに、最近は一人で食べてさっさと部屋に引きこもっています。
「どうしたんだろう、何か心配事でもあるのだろうか。」と皆思いながら、声もかけにくい雰囲気でした。


  ある晴れた休日の朝、私は思い切って、彼が一人で食事をしているテーブルに自分のお盆を持っていきました。
「おはよう、今日は素晴らしい天気だね。何かいいことが起こりそうな気がする。」
そのように声をかけました。
彼はそのあとも黙って食事を続けました。


その夜、床に就いたとき、急に私の部屋をノックする音。
あの友人でした。
「天体望遠鏡があるんだ。今日は星空がきれいだぞ!」
いつものあの元気な声です。


  寒い夜だったと記憶します。
彼の天体望遠鏡で、星空を見ました。
「土星は見えるのかい。土星の輪の実物を見たことがないんだ。」
「それならこっちの方角だよ。」
そこに土星がありました。図鑑で見るようなあんな大きくは見えません。
星空の一角、本当に小さく、でもくっきりと見えました。
土星の輪はひっそりと静かにさらに小さく見えました。
本物の土星、本当にそこにある。いま自分とともにこの世にある。


翌日からの彼はいつもの元気な姿を取り戻していました。


「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」
(新約聖書マタイの福音書第19章19節より)


(注)2010年11月に東京カベナント教会ブログ「重荷をおろして」に投稿していたものです。あの時の土星、あの時の友達のことを思い出して投稿しました。


虎猫 

×

非ログインユーザーとして返信する