おっちゃんの出る映画―偉大な生涯の物語―(ゴルゴタの丘その1)
「偉大な生涯の物語」という映画をご存知でしょうか。
"The Greatest Story Ever Told" (1965)
イエス様の生涯を描いたハリウッド映画です。
監督はジョージ・スティーブンス。「シェーン」や「ジャイアンツ」などを製作した巨匠です。ライフイフワークとして是非とも実現させたかったのがこの作品でした。
趣旨に共鳴した名優たちが手弁当(出演料5ドル!?)で駆けつけました。
私が見たのは高校生くらいの時でしょう。イエス様も聖書も知らない時でした。
イエス様を演じたのはスウェーデンの名優マックス・フォン・シドー
イエス様の映画はその後何本か見ましたが、この人ほど見事に演じた人はいないと思います。特に、子ロバに乗ってエルサレムに入場するシーンでは、群衆の歓呼がやがて憎悪と嘲笑に変わっていくのが、ノンクリスチャンであったそのときですら予感されました。
洗礼者ヨハネはチャールトン・ヘストン。この迫力は他の人では伝えられません。
イエス様を裏切るイスカリオテのユダを演じたのはデビット・マッカラム
私たちの年代では、テレビ「ナポレオン・ソロ」のイリヤ・クリヤキン役と言えば通じるでしょう。悩みながらイエス様を裏切る姿はとても印象に残っています。
手弁当で駆けつけた名優たちのために数々の見せ場が作られています。
十字架を背負ったイエス様を見かねて、勇気を振り絞って近寄り、持っていた布でイエス様の顔をぬぐうのがキャロル・ベイカー(カトリック教会では聖ヴェロニカとして知られる女性です。この布にイエス様の顔が浮かび上がった奇跡が伝えられています)。
さらに、イエス様に代わって自ら十字架を担うシモン役にはシドニー・ポワティエ。
それぞれワンカットずつですが、名優の競演です。
そしてついにイエス様が十字架につけられ、息絶えます。
猛烈な雷鳴・豪雨、神殿の布が裂けます。
そのとき、画面が変わり、丘の上にローマ軍の隊長が一人マントを翻して仁王立ちになり、「彼こそ真に神の子であった。」と言います。
その隊長役がなんとジョン・ウェイン。
壮大な史劇は、突如西部劇に変じてしまいました。
思わずスクリーンに向かって突っ込みを入れたくなりました。
「おっちゃん。出る映画まちがっているよ!」
ジョン・ウェインと言えば西部劇。私たちの年代では「史上最大の作戦」(第二次世界大戦のノルマンジー上陸作戦)の勇猛で部下思いの落下傘部隊長にしびれた人も多いと思います。
丹念に演技をする人ですが、ワンカットで大芝居をする人ではないと思います。
やはり、人にはそれぞれの役割があり、それにふさわしい場があると思います。
それでも、東洋の少年に突っ込みを入れられながら、自分にふさわしくない役でも懸命に演ずるこのおっちゃんには、とても親しみを感じたのを覚えています。
「奉仕にはいろいろの種類がありますが、主は同じ主です。
働きにはいろいろの種類がありますが、神はすべての人の中ですべての働きをなさる同じ神です。」(コリント人への手紙第一 第12章第5,6節)
虎猫
【注】このブログは2011年11月に東京カベナント教会ブログ「重荷をおろして」に投稿したものです。受難節にふさわしいものとして再投稿しました。ゴルゴタの丘についてはこれを含めて3本のブログを用意しており、順次公開してまいります。