日産の労組は、そして従業員は、いったい何をしていたのか。
日産のカルロス・ゴーン元会長の不祥事を報じる記事で、社外取締役が1人しかおらず、ガバナンスが効かなかった、といった論説を目にします。
社外取締役によって不祥事が発覚したり、未然防止された事案は、果たしてどれだけ
あるのでしょうか。社外取締役が複数いたからといって、どのような防止・発見ができたというのでしょうか。
そもそも、この会社の労働組合は、そして従業員の皆さんは何をしていたのでしょうか。
これだけ大規模な不正について、トップだけでできるわけがありません。
多数の実務家が関与していたはずです。稟議書・決裁書を作り、伝票を起票し、帳簿をつけ、関係部署と調整し、一体、何人の人が関与していたのでしょうか。
実際に関与していた人もまた、その周りにいた人も異常に気が付いていたはずです。
さらに言えば、日産リバイバルプランの歪が現場を疲弊させ、品質偽装等の問題を引き起こしてきたのです。
現場の多くの人が気が付いていたはずです。
労働組合は、何一つ知らなかったのでしょうか。誰も労組に相談もしてこなかったのでしょうか。
日産で働いている人たちは、「自分たちは純粋に被害者だ。」と大手を振って言えるのでしょうか。労働組合をつうじ、代表を通じてトップの暴走を食い止めるのは、その会社に働く人の社会的な使命ではないでしょうか。
【参考文献】
小池一夫「企業統治改革の陥穽」229~230頁より要約して引用
「いまの日本の多くの議論は役員会への従業員代表参加を全く無視している。他方、まるで神の声のように社外取締役に期待する(中略)
社外取締役に期待する理由はふつう(a)企業の外の声、そして、(b)他の企業を経験した深い「経験」や多くの企業をみた「識見」であろう。だが、まず企業の外の意見、少なくとも、その代表の意見といえるだろうか。・・・社外取締役を選ぶのは、ふつう現社長である。日本に限らず、米国でも同様である。・・いわば社長の援軍「お友達」であって、肝心のときにきちんと反対することを期待できようか。」
「社外取締役の見識が不足しているからではない。非常勤パートタイマーである。その産業の経験が乏しい。・・非常勤で事情をよく知る時間がない人に、よい提案をどれだけ期待できるだろうか。」
「これらの点で従業員代表はむしろ、いや、はるかに勝る確率が高い。その企業にフルタイムで長期間つとめている。その企業の中のある分野を知る長い経験がある。社外についても他社とのきびしい交渉、取引をつうじ、かえって社外の真実を知らされよう。・・・しかも、社長が選び任命するのではない。社内での長年の仕事ぶりを見て、仲間が代表に選出している。どうして識見がないといえるのだろうか。」
銅鑼猫