toranekodoranekoのブログ

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財務省の「セクハラ調査」の異常さ

 財務省の福田淳一事務次官が女性記者にセクハラ発言を繰り返したと報じられた問題について、麻生大臣は、財務省の顧問弁護士に調査を委託し、被害女性が名乗り出て欲しい、名乗り出てくれないと調査ができない、と発言しています。
このような調査手法については、様々な批判があります。
 財務省のセクハラ調査に批判相次ぐ 「恫喝に等しい」(朝日新聞デジタル4月17日)


 私なりに整理してみました。
 そもそも、セクハラ問題や調査手法について、麻生大臣の無知と不見識は目に余るものです。本来は、安倍総理こそ、このような問題で指導力を発揮することが望まれます。
麻生大臣を直ちに調査から外し、財務省以外で公正中立な立場での調査の仕方を命ずるべきです。


①今回のセクシャル・ハラスメントの重大さと調査の注意
 民間企業については、厚生労働省が様々な資料で具体的な手順・注意点を示しています。麻生大臣は読む気もないでしょうから、側近の方がしっかり読み込んで大臣に注意喚起すべきです。
 本件は、事業所の中の労働者へのハラスメントではなく、外部の記者へのハラスメント行為ですが、記者は取材で高級官僚からの情報を得ることに必死になっています。職場の上司・部下の関係以上に弱い立場にあります。
 プライバシーの問題として名乗り出るのが難しいだけではありません。名乗り出れば自分だけでなく、当該報道機関そのものが政治家や官僚から嫌がらせを受けることを懸念しているでしょう。すなわち著しい不利益処分がもたらされかねないのです。
 せめて厚生労働省の次のパンフレット等を熟読し、対応を至急練り直すべきです。
職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!


②調査の主体:財務省は当事者。そもそも調査主体にはなり得ない。
 民間企業で一部署の次長が、取引先の女性にセクハラをした疑いがあるときに、当該部署の部長が調査を取り仕切って、自分の部署の顧問弁護士に調査させるでしょうか。
 当該部署の幹部の問題です。当該部署の部長が公正な調査を仕切れるはずがありません。自分の部下をかばおうとする、少なくともそのような疑いが持たれます。現実に麻生大臣は当初は調査も処分もしない、とまで言っていたのです。
 常識的に、会社全体の問題として会社が調査の取り仕切りを考えるしかない。財務省の不祥事について財務省に調査させてはならないのです。
政府として公正客観的な立場で調査できる部署がないのでしょうか。民間企業ならば、経営に直結した通報窓口を設け、現場から独立した部署が調査をします。


②「全然つきあいのない弁護士にお願いする判断ができますか」の珍妙さ。
 調査を担う弁護士事務所が財務省と顧問契約を結んでおり、公平性に欠けるとの指摘に対して、麻生大臣が言った言葉です。
つき合いのある弁護士に公正な調査を求めることが無理です。
日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」が参考になるでしょう。
概要として次のように記載されています。
「内部調査に弁護士の参加を求める『内部調査委員会』では、ステークホルダーやメディア等への説明責任を果たせないことも多い。企業から独立した委員会のみをもって調査する『第三者委員会』が求められている。」(ガイドライン前文より)
「この第三者委員会には、企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない。顧問弁護士は、『利害関係を有する者』に該当する(第三者委員会に参加できない)。」(ガイドライン第二.5.利害関係より)


 企業等不祥事では企業と独立した第三者委員会の調査が強く求められています。
つき合いのない弁護士にこそ依頼すべきなのです。
 麻生大臣は日弁連のこのガイドラインに、目を通したこともないのでしょう。大臣の側近の方々は大臣にしかるべくアドバイスすべきだったのです。大臣の無知と不見識が「全然つきあいのない弁護士にお願いする判断ができますか」という妄言に現れています。


【参考1】厚生労働省パンフレット
職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!より
「事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における生徒などもセクシュアルハラスメントの行為者になり得るものであり、男性も女性も加害者にも被害者にもなり得るほか、異性に対するものだけではなく、同性に対するものも該当します。」(12頁)
「相談を受けた場合の『留意点』には、いわゆる『二次セクシュアルハラスメント(相談者が相談窓口の担当者の言動などによってさらに被害を受けること)』を防止するために必要な事項も含まれます。」(19頁)
「職場におけるハラスメントに関する相談者・行為者等の情報はその相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又はそのハラスメントに関する事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。」(24頁)


【参考2】日本弁護士連合会
「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(前文より抜粋)
「この種の委員会には、大きく分けて2つのタイプがある。
企業等が弁護士に対し内部調査への参加を依頼、調査の精度や信憑性を高めようとするもの(以下、「内部調査委員会」という)。
しかし、企業等の活動の適正化に対する社会的要請が高まるにつれて、この種の調査で は、株主、投資家、消費者、取引先、従業員、債権者、地域住民などといったすべてのス テーク・ホルダーや、これらを代弁するメディア等に対する説明責任を果たすことは困難(中略)。
そこで、注目されるようになったのが、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分 析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会(以下、「第三者委員会」という)である。すなわち、経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続 可能性を回復することを目的とするのが、この第三者委員会の使命である。」


銅鑼猫

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