toranekodoranekoのブログ

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東日本大震災と自衛隊

杉山隆男著「兵士は起つー自衛隊史上最大の作戦」




 東日本大震災に直面した自衛隊員の行動を追ったノンフィクションです。
読み進むのがとてもつらい箇所もあります。それでも広く読まれるべき本です。
ここでは、心に残ったいくつかの場面を要約しながらご紹介します(本書では実名の箇所と匿名の箇所があります。ここでは匿名で統一しています)


 K三曹は過酷な目にあった住民からやり場のない怒りが自分たちに向けられるのを覚悟していました。
「にもかかわらず、(被災者の)口から出てきた言葉は・・自分たちを背負って泥の海の中を渡ってくれた隊員への感謝であり、ねぎらいだった。
『ありがとう』『ご苦労さん』『すまないね』
ご苦労なのはおばあさんたちなのに、とK三曹は思いながらも、そうした感謝のひと言をもらっただけで、再び冷たいぬかるみの中に入っていく気力がどこからか湧きあがった・・。」(本書128~129頁より)


 遺体収容に当たった若い隊員の思い。
「電柱に宙吊りになった遺体を目にして以来、十九歳のS士長はほぼ毎日のように遺体と向き合い、収容を続けていた。新しい遺体と接するたび、重くのしかかるものは変わることはなかったが、S士長の中では新しい思いが生まれていた。
それは、自分たちが行っているのは、遺体の収容ではなく・・・『この方を、ご家族にお返しする』ことだ、という思いだった。『お返しする』ことが、帰りを待っている『家族の方にとっては一番いいことかなと思って、そう思えばより丁寧に運び出して返してあげるのが大事だな。』と考えるようになったのである。」(本書143~144頁)


 H隊長は自衛隊の核・化学兵器の専門部隊を率いています。
深夜です。隊員に仮眠を取らせ、3時間後に、放水車を原発に向けて出動させます。
全員を連れて行くわけにはいきません。隊員の人選に手間取っているわけにはいきません。
「暗がりに目が慣れてくると、H隊長には、うっすら闇を通して、床に横になっているはずの隊員たちが上体を起こし、自分の方に視線を送っている様子がおぼろげながらわかってきた。
無言である。黒い影となった隊員たちは闇の中からただ黙ってみつめてくるだけである。しかし、その眼差しは言葉以上の強さで、
『自分が行きます。』『自分を選んでください。』
と訴えている。だが全員を連れて行くわけにはいかないのだ。H隊長は連れて行く者と残していく者を選ばざるを得なかった。」(本書208~209頁)


 M一尉はいつ自分が死んでもよいように三か月に一度奥さんにあてた遺書を書きます。
「自分がいなくなったあとの覚悟を迫るのは妻に対してだけではなかった。小学校にも上がっていない、まだ五つの長女を前にM一尉はこう言う。
『おとうさんはいつかいなくなるかもしれないから。』
父親の突然の宣言に、娘は『帰ってこないのはいやだ』と泣きじゃくる。
だが、M一尉は、ごめん、ごめん、とあやしたりはしない。
『おとうさんが死んで帰ってこなくても、おかあさんをちゃんと助けて生きていくんだよ』
最初のうちは泣きじゃくるばかりだった娘も、最近ではM一尉の言うことがおぼろげながら理解できるようになってきたのか、泣きはらした顔に、何か思い定めたような表情があらわれるようになったという。」(本書242~243頁)


 私たちは何をすべきでしょうか。
私たちにできることは、このような勇士たちと勇士を支えるご家族を心にとどめ、感謝を忘れないことです。


虎猫

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