裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の大きな過ち
「働き方改革法案」について、厚生労働省の粗雑な調査とこれに基づく安倍首相のお粗末な答弁から、遂に裁量労働制拡大は今国会提出断念に至りました。
昨日は、これに関連する紙芝居動画をご紹介しました。
紙芝居で考える「働き方改革」(過労死は会社を潰す。仕事と介護の両立)
それ以外にも何本かブログを投稿しています。こちらもご覧ください。
「脱時間給制度」はなぜ誤りなのか
「脱時間給」(高度プロフェッショナル制度)の誤り (その1)過重労働の温床・経営者の責任放棄
「脱時間給」(高度プロフェッショナル制度)の誤り (その2)労働時間の厳格な管理こそが生産性向上をもたらす。。
さらにいくつか補足します。
まず初めに確認したい。
労働災害で死者が出た場合、経営者は悔悟と自責の念に打ちひしがれる。「もう会社をたたもう」と考える経営者もいる。会社経営の中で働く人を死なせたことの重大さは、まともな経営者ならば、よくわかっているはずだ。
だが、過労死・過労自殺が起こった会社の経営者は、果たしてどうなのか。
NHK が女性社員の過労死を3年間ひた隠しにし、発覚後も「記者は個人事業者のようなものだ。」と言い放ったという。「労働者が勝手に死んだ、自己責任だ。」とでも思っているのか。これは果たして極端な例なのか、過労死・過労自殺を起こした会社の経営者の本音ではないのか。
「裁量労働制の拡大」や「高度プロフェッショナル制度」(いわゆる脱時間給)について「時間より成果で賃金が決まる。効率的な働き方に繋がり労働者のためになる。」といった議論がいまだに横行している。心得違いも甚だしい。
過労死・過労自殺した人は時間外手当がほしかったのではない。成果を厳しく追及され、追い詰められたのだ。この制度は、経営者が成果だけを強調し、労働時間管理を労働者の責任に丸投げするものであり、過重労働に陥るのは目に見えている。
中には効率よく仕事して早帰りする人もいるかもしれない。だがそれは、可能性の問題に過ぎない。
働き方改革の中で、刑事罰まで科して厳格な労働時間管理を求めているのはなぜか。
我国の労働基準法では労働時間規制があるが、会社ごとに固有の事情があるとして、労使の協定(三六協定)で、時間外上限を定めることを認めてきた。
ところが、過労死・過労自殺に見られるとおり過重労働が横行している。国としてもはや労使の自治には任せられない、と考えたのだ。「国家として、少なくとも死ぬような働き方は許さない。」として、刑事罰をもって規制することとしたのだ。
経営側が「裁量労働制の拡大」や「高度プロフェッショナル制度」などの「柔軟な働き方」にこだわるのは、労働者を守るためではない。厳格な時間外規制を免れる道を探しているだけではないのか。
思うに、人を守り社会を守る厳しい規制こそがイノベーションを生む。我国の自動車産業が、厳しい環境規制に真摯に取り組み世界に冠たる地位を築いたのがその好例だろう。
逆に、姑息な逃げ道を探るものは早晩淘汰されることになろう。
経営者は、いずれの道を選ぶのか。心して考えるべきだ。
【ご参考】
次のセミナーを企画しています。詳細は追ってお知らせします。
「真の働き方改革こそが不正・不祥事を抑止し、イノベーションを生む」
銅鑼猫