toranekodoranekoのブログ

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「内なる国際化・多文化共生に向けて」

この記録は、NPO法人多言語広場(ピアザ)CELULAS(セルラス)鈴木理事長の昨年9月28日渋谷区青少年対策地区委員会主催の講演の内容を、ニックとして特に印象深かった箇所を中心に纏めたものです。録音録画から逐語的に書き起こしたものではありません。
読み言葉としてのわかりやすさを考えて小見出しや配列なども工夫しています。


理事長の講演の内容は多岐にわたり、この取り纏めで尽くせるものではありません。少しでも皆様のご参考になるようにニックなりに纏めてみたものです。
講演の内容の一端を知っていただき、セルラスの活動への理解を深めていただく一助となれば幸いです。


1.日時:平成28年9月28日(水)午後7時~8時30分
2.場所:ケアコミニティ美竹の丘(渋谷区)
3.主催:渋谷区青少年対策地区委員会


【内容】(記録者にて適宜小見出しをつけ、特記事項を記録)


はじめに
日本の総人口は2013年から16年にかけて約58万人減少。2060年には現在の1億2,600万人から8,600万人になるとされる。
一方で在留外国人*は同じ期間に24万人増加。現在、230万人。(*3ヶ月以上の在留者)
日本は確実に多言語・多文化社会へと進んでいる。
日本人としてのアイデンティを保持しつつ、他の民族・文化との共存を図る必要がある。
一方で、ドイツメルケル首相の「多文化共生は全く失敗であった。」という深刻な反省。
多文化共生の難しさ、ほころびを直視しておく必要がある。
(記録者注)このメルケル首相の発言については、次の参考記事も参照ください。
 室橋祐貴
「メルケル首相『多文化主義は完全に失敗』ー今この発言に注目すべき理由」
 (2016年1月25日THE HUFFINGTONPOST



1.私の体験より
①ユーゴスラビアのアイスホッケーチームはなぜ敗れたか、その後、なぜ、強力チームに復活したか。
ユーゴスラビアはスロベニア、クロアチア、セルビア、ボヘミア、モンテネグロ、マケドニアの多民族国家。六つの民族四つの言語三つの宗教二つの文字を持つ。
 (記録者注)ユーゴスラビアの事情
以下のお話の1971年はちょうど「クロアチアの春」として知られる大規模なクロアチア人による抗議行動の時期。その後、1980年チトー大統領死亡後に民族独立、長年の紛争を経て、現在六つの共和国等になっている。参考記事:Wikipediaユーゴスラビア 外務省地域別インデックス欧州


1971年各民族から強豪選手を集めたアイスホッケーチームが来日。私(鈴木理事長)が、チームのお世話をした。バスの中では選手たちがムスッとして互いに話もしない状態。
強豪といわれたのに、日本チームと対戦して惨敗した。民族が違い、言葉が違いコミュニケーションができなかったのが敗因、と思われた。
翌1972年再来日。その時には破竹の勢いで快勝。
選手たちがよくコミュニケーションがとれていようにも思えたので、いったい何語で話しているのか聞いてみた。
「どんな言葉でもないですよ。その時のタイミングでその時の言葉が共通語になるんです。」
チームが同じ目的に向かう一体感の中で、チームの共通語を見つけて育ててきた、という。


②英語を話せる人はなぜ、孤立するのか。
ところで、英語をよく話せる人には共通の特徴があるような気がする。英語話者以外とは話そうとしない。「あなたは英語しゃべれないんですか。残念ですね。」それだけ言って交流が途絶えてしまう。


③幼少時、北海道の戦後の在日韓国・朝鮮人との元体験⇒私の決意。
  そして、焼肉屋の親父さんが私の先生となった。
戦後間もなくの北海道。母に連れられて歩いていると道端でたき火をしながら集まっている人がいる。「あの人たちのそばに行ってはだめよ。」と母に言われる。
朝鮮半島から強制連行で炭鉱などの労働に従事させられた人々だった。
自然に在日朝鮮人韓国人への偏見が生まれていった。
その偏見を打ち破らなければいけないと思った。その国の言葉を学んでみようと思った。
10分間ほどの韓国語のテープを入手して何回も聞いてみた。日本語の簡単な解説パンフレットはついていたが、本当にどんな内容なのか、こんな発音で本当に正しいのかどうかはよくわからない。悩んでいるうちに近所の焼肉屋の親父さんなら韓国語ができるのではないか、という話を聞きつけた。
お店に行ってビールで時間を潰しながら、客足の途絶えるのを待ち、親父さんに「韓国語を少し勉強している。聞いてもらえないか。」と頼んでみた。
覚えたままの発音で話すのを親父さんはじっと聞いてくれた。
「なかなかいいね」と言いながら、同じ内容を親父さんが韓国語で話してくれた。あまりにも美しい言葉に感激し、それから、その親父さんは私の韓国語の先生になった。


2.多言語を用いる2人の青年から学ぶ
我国の長年の英語教育は失敗の山、外国語への怨念の山を築いてきた。
言葉は言葉だけで成り立っているのではない。その先に人がいる。
先生や教科書との「違いを見つけて」是正して100点満点を取る、という姿勢ではなく、むしろ、「同じを見つける」べきだ。オランダなどではあらゆる言語を受容する、という姿勢を大切にしている。「受容」この感覚を大切にすべきだ。


私が出会った2人の青年のことをお話したい。
①インドのセティさん
当時29歳。技術研修で来日。
英語は自由に操れるので、英語で会話していたが、「君は何ヶ国ぐらいしゃべれるんですか?」と聞いてみた。セティさんは「その質問を聞かれるととても恥ずかしいんです。たった6か国語しかできません。」
聞いたこちらの方が恥ずかしくなった。
何語なのかと聞くと、インドの公用語・民族語など5ヶ国語と英語。
「どんなふうに使い分けるのですか?」と聞くと、「相手の人が話している言葉をそのまま使います。」
ラジャスタニを使うお店の人と話す時にはラジャスタニを使う。出身地の言葉なので、使うと喜ばれるから。マラティを使う親戚にはマラティで話す。サンスクリットを使う人が自宅に来れば家族全員でサンスクリット語を使う。英語を話す人がやってくれば自然に英語が出てくる。
「それで頭の中がごちゃごちゃにならないんですか。」と聞いても「別に。しばらく話していない言葉であっても、相手の人が話し出せば、自然にその言葉が出てきます。」
「じゃあ、一体どうやって勉強したんですか?」
サティさんはしばらく考えてから、「わかりません。英語は学校で勉強しましたが、学校で勉強する前から必要に応じて使ってきました。他の言葉については、学校で学んだわけではなく、自然に身につきました。」


②アフリカの34か国語を使う青年
「鈴木さん大変だ!34ヶ国語しゃべれる青年が来た。」と知り合いの方から(名古屋の研修センター?)連絡があったので会ってみた。
自分の国でお父さんと一緒に商売で国中を回っているうちに、部族の言葉は自然に覚え、ヨーロッパに留学してから欧米系の言葉は身についていった。
その青年とは英語で話していたが、そのうちに「はい」とか「いいえ」とか自然に日本語のような受け答えが出てくるので、「君はひょっとして日本語をしゃべれるんじゃないですか。」と日本語で聞いてみた。
その時の答えが忘れられない。
「いいえ、私なんかまだまだです。」と日本語で答えたのだ。
びっくりして、来日前に日本語を勉強したのかと聞いてみた。
全く勉強した事はない。羽田(成田?)にやってきて初めて日本語を聞いた。それはほんの2週間前だという。
インドの青年にしたのと同じ質問をしてみた。
「一体どうやって勉強したんですか?」
青年の答はインドの青年と同じだった。「わかりません。」
ただ、外国語の習得は沢山の言語が既に入っていると、次の新しい言語の習得にかかる時間がどんどん短縮されていくことに気づいた、と。まさしく、日本語を2週間で習得したことがその証拠である。
「34ヶ国語も頭に入っていたら、前に覚えた言葉を忘れてしまうのではないか。」そう聞いてみた。すると「相手が話してくれたら数分間でその言葉を思い出します。」という。
そこで私(鈴木)は気が付いた。学校の勉強ではなく、生活の中で耳から入ってきた言葉は身について失われることがないのだ、と。


3.そして見つけた多言語習得のコツ!これが世界に通じる力となる。
①「想像力と創造力」「音声」「必然性」(セルラス多言語活動三原則)
私たちの赤ちゃん研究のことを少しお話ししたい。
赤ちゃんはどのようにして言葉を習得していくのか。
例えば、「痛い」という言葉をどのように習得しているのか。
これは、例えばお父さんお母さんが何かにぶつかって「痛い」という。
その状況を見ながら、状況場面の中で動いている意味像に「想像力」を働かせ、その意味を見つけてゆく「創造力」。その状況場面の中で働く「音声」を聴き、言葉が働く「必然の場」を通じて意味化している。
このことは後でもう少し詳しくお話する。


②言語のメロディとリズム。ことばの器作り
そしてもう一つ。生まれた時からの赤ちゃんの発する音を聞いていると、言葉のメロディとリズムをまず、習得している、ということがわかった。
お兄ちゃんが話している「ノンタンノンタンブランコ乗せて」を真似するおチビちゃんのテープを聴いて欲しい。
「ノンタンノンタンブランコ乗せて。ダメダメだってこれから○○するんだもーん」の繰り返し。この「○○するんだもーん」の箇所が「立ち乗りするんだもーん」「片足乗りするんだもーん」というふうに変わっていく。
チビちゃんはお兄ちゃんの真似をして「ノンタンノンタンブランコ乗せて」までは言えるようになった。その後がわからない。
すると「あ、あ、あ、あ、もーん」とごまかしている。
思い立って、この「あ、あ、あ、あ、もーん」の時間を計測してみた。なんと、お兄ちゃんの「これから立ち乗りするんだもーん」とぴったり同じ時間だった。
すなわち、お兄ちゃんの話のメロディ とリズムを必死に追いかけている。これが言葉の器作りだ。その器をまず作ってから、そこに単語を当てはめていくのだ。
メロディとリズムをまず器として身につけていく。これが赤ちゃんが行っている自然な言葉の習得方法である。
皆さんの中で日本語をどのようにして習得したか、覚えておられる方はいらっしゃるか?
障害でもない限り、日本人が日本語の習得に失敗することは殆んどありえない。その取得の仕方は上で述べたようなプロセスをたどっている。言葉の器としてのメロディとリズムを体得し、状況の中に流れる音声を想像力と創造力を働かせ必然のものとして意味化しているのである。
日本の英語教育とは全く異なる。単語を覚えて組み合わせるのではない。単語は後からついてくるものだ。


③シャドウイング
以上のことは、私たちのグループで行っているシャドウイングという手法を体験していただいたらよくお分かりになると思う。通訳の勉強でも用いている手法だが、ネイティブ・スピーカーの話す音声にかぶせるようにして、影のように一緒に話す。一つ一つの言葉が聞き取れなくても、ともかく、あ、あ、うん、うん、というだけでいい。メロディとリズムを追いかけていく。そのうちにポツポツと聞き取れる音が出る。それを真似していく。
大切なのは聞き流すだけではなく、自分で声を出すこと。それぞれの言葉で使う筋肉が違う。自分で声を出して真似することで筋肉が鍛えられていく。
例えば、母音は日本語ならアエイオウの5つ。この大きく口を開いたアから口をすぼめたウまで。これは、万国共通。韓国語なら、このアからウまでに9つの母音が入る。韓国語のシャドウイングをすることで日本語にない残り4つの母音を話す筋肉が鍛えられる。


④前提として「人と向きあう」「人と一緒に」
これまで述べたことの前提となるのは人と向き合うこと。ことば(外国語)と向き合うのではない。米国人がいるとか、何語が話されている、という感覚を抜きにして、目の前にいる人と向き合うこと。
そのなかで、先にお話した「想像力と創造力」「音声」「必然性」が働くことになる。私たちは、これを「セルラス多言語活動三原則」と呼んでいる。


4.まとめ―世界に通ずる人材
カルロス・ゴーンさんの話されたことを紹介したい。
マスコミの取材で「世界に通ずる人材の特性は何か。」と聞かれて、次のように答えた。
「自分と違うものに興味を持ち、その違いから学び、より理解しようとする姿勢。これは、持って生まれたものではなく、体験を重ねて培われていく。」
私たちの意識の大きな改革が求められる。日本から世界へ。新たな共生社会を築くこと。
グローバル人材とは英語が話せる人のことではない。
(記録者注)カルロス・ゴーンさんについては、日経新聞「私の履歴書」で、ご自身の幼少時からこれまでを振り返る記事が今月初めから1か月の予定で連載されています。ぜひご一読ください。


ニック&アーニャ
                                      以上

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